現在は共働き世帯も増えていますが、結婚や妊娠などライフスタイルの変化によって、扶養に入るかどうか考える機会が訪れます。
扶養とは一体何なのか、そして入った時・入らなかった時のメリットとデメリット、控除の内容について詳しく解説します。
扶養に入るメリットとデメリットとは?
「扶養」とは、「自力で生活できない者の面倒をみること、養うこと」という意味です。
誰でも学生のうちは経済的に自立した生活を送ることはできないので、親に扶養されています。
それが就職して社会人となり、年収130万円以上稼げるようになると、経済的に自立したと見なされ、親の「扶養」からはずれて自分で税金や社会保険(健康保険・年金)を払っていくようになるのです。
しかし、主に女性の場合になりますが、結婚する際にもう一度「扶養に入るかどうか」を選ぶ機会が訪れます。
女性は結婚すると、夫の扶養に入るべきなのでしょうか。
扶養に入ることによってどのようなメリット・デメリットがあるのかについて、探ってみましょう。
「扶養に入らない場合」のメリット・デメリットは?
20代の独身女性Aさん(ある会社の正社員で年収250万円とする)を例に挙げて考えてみましょう。
この度、Aさんが結婚することになり、夫の扶養に入るかどうか迷っているとします。
Aさんが、「結婚後も引き続き同じ職場で正社員としてバリバリ働き、キャリアを積んでいきたい」と思っている場合は、扶養に入れません。
夫の扶養に入るためには、妻の年収は130万円以下でないといけないからです。
Aさんの場合、扶養に入りたければまず年収を250万円から130万円以下に落とす必要があります。
扶養に入らない場合は、税金や社会保険を自力で払っていかなければならないというデメリットはありますが、妻の収入はそのまま家計に直結するので、稼げば稼いだ分だけ世帯収入を増やせるというメリットがあります。
「扶養に入る場合」のメリット・デメリットは?
先ほどとは逆に、Aさんが「自分の仕事よりも家庭内での夫のサポートや子育てに専念したい」と思っている場合は、結婚後に退職するか、年収130万円以下に減らせば、扶養に入ることができます。
Aさんが年収130万円以下で夫の扶養に入った場合、社会保険を払う必要がなくなり、配偶者特別控除を夫が受けられるというメリットがあります。
何らかの仕事はしていたいという場合でも、退職までしなくても、扶養控除の範囲内であれば働きながら控除を受けることができるので、パートや副収入程度の仕事であれば行う事が可能です。
デメリットはあまりないように見えますが、夫の扶養に入るためには単純に妻の収入を抑えなければならない分、世帯収入全体が減ってしまうのが難点です。
Aさんのように扶養に入るか悩んでいる人は、「単純にどれくらいの収入を得たいか」というだけでなく、「どういう暮らし方が自分に合っているか」という点も踏まえて決めると良いでしょう。
例えば、子どもが小さいうちは家でじっくり子育てに専念したい人へは、夫の扶養に入ることをオススメします。
逆に、子どもを産んだらすぐ職場復帰したい思いがある人は、夫の扶養に入る必要はないでしょう。
配偶者控除ってどんな仕組み?
配偶者控除とは、妻を扶養していることによって夫が所得税を控除される仕組みのことです。
現行の仕組みなら、妻の年収が103万円以下であれば満額38万円の控除が受けることができます。
また、103万円を越えていても141万円未満であれば配偶者特別控除を受けられるのです。
ただし、平成30年からこの制度が改正されるので、金額は変わります(下記参照)。
扶養に入ることで得られる控除の内容と手続きを解説!
扶養に入ることで得られる控除は2種類あります。
1つは税金(所得税)における扶養控除(配偶者控除)で、もう1つは社会保険(年金、健康保険)における扶養控除です。
両方の内容と手続きについて見ていきましょう。
所得税を減らす「配偶者控除」と「配偶者特別控除」とは?
配偶者控除・特別控除とは、世帯主(主に夫)が「会社員・公務員」や「白色専従者と青色専従者以外の自営業」の場合に、「妻を扶養することで所得税を節税できる」という仕組みです。
「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の2種類があります。
※平成30年からこの仕組みが改正されることになったので、下記では新しい制度に則って解説します。
妻の年収103万円以下なら「配偶者控除」
配偶者(妻)の給与収入が年間103万円以下であれば、夫の所得税について38万円の控除を受けることができます。
また、株の配当や不動産所得など別の収入がある場合は、その合計が38万円以下であれば配偶者控除の対象となります。
平成30年から実施される改正後の内容で注意したいのは、「控除を受ける人(夫)の年収」が条件に加わり、夫の年収が高いと控除額が減ることです。
- 夫の年収1,120万円以下:控除額38万円
- 夫の年収1,120~1,170万円以下:控除額26万円
- 夫の年収1,170~1,220万円以下:控除額13万円
- 夫の年収が1,220万円以上:控除額0円
このように、夫の収入によっては配偶者控除が減額されてしまうように変更されました。
実質、高収入の人にとっては増税になってしまったようです。
妻の年収103万円以上201万円未満なら「配偶者特別控除」
配偶者特別控除とは、「配偶者(妻)の収入がわずかに103万円を越えただけで控除が受けられない!」という風にならないように設けられた救済システムです。
現行では妻の収入が103万円~141万円未満の場合に階段状に減る形で「配偶者特別控除」を受けられるようになっていますが、改正後所得制限が少し拡大されます。
平成30年の改正後は、妻の収入が103万円~150万円未満であれば現行の配偶者控除同様に「38万円」の控除を受けられます。
ただし、夫の所得制限が追加されたのは配偶者控除と同じなので、丸々38万円の控除を受けられるのは夫の収入が1,220万円以下の場合に限られます。
そして、妻の年収が150万円~201万円未満であれば、階段状に減る形で配偶者特別控除を受けられるようになります。
なお、妻の年収が201万円以上かつ夫の年収が1,220万円以上になれば、配偶者控除も配偶者特別控除も両方受けることができません。
社会保険における扶養控除とは?
こちらは、世帯の稼ぎ頭(主に夫)が会社員または公務員の場合に、妻が夫の扶養に入ることで社会保険(健康保険・国民年金)を支払わなくて良いという仕組みです。
- 健康保険:夫の会社の健康保険に、妻も加入する形になります。
- 国民年金:夫が第2号被保険者(厚生年金保険料の負担が必要)となり、妻は第3号被保険者(保険料の負担なし)になります。
ただし、夫が自営業など事業主の場合は社会保険が控除される仕組みは当てはまらないのでご注意ください。
夫の扶養に入れるかどうかの条件は、配偶者(特別)控除の場合と別で、「交通費を含む年収見込みが130万円以下かどうか」とされています。
ただ、会社によってはその条件が違う場合もあるので、詳しくは夫の会社に問い合わせましょう。
扶養に入るための手続きはどうする?
最後に、妻が夫の扶養に入る手続きについて解説します。
養う側の夫が会社員や公務員であれば、勤務先に必要書類を提出するだけで、配偶者(特別)控除も社会保険の控除も全ての手続きを会社がしてくれます。
必要書類は、年末調整の際に配布される「扶養控除等申告書」と「保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除申告書」の2枚となり、それぞれに申告欄がありますので記入して提出しましょう。
自営業の場合でも、青色申告や白色申告の専従者でなければ、確定申告の際に扶養者がいることを記入すれば「配偶者控除」を受けることができます。
ただし、先に述べた通り、自営業の場合は社会保険の控除はありません。
妻は自分の会社の健康保険に加入するか、国民健康保険に加入し、第1号被保険者として自分で払わなくてはなりません。
国民健康保険に加入したい場合は、手続きを自分で市区町村の役所に行って届け出をしましょう。
※夫が自営業で妻が公務員などの場合や専業主夫になる場合など、逆に夫が妻の扶養に入る事も可能です。今回は一例として、妻が夫の扶養に入る場合でお話ししました。