女性は月に1回、厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、“月経(生理)”という形で子宮内が浄化されます。
月経を経て私たち女性は、毎月新しい体へと生まれ変わるのです。
しかし、月経の時以外にも出血があり悩んでいる人もいます。
なぜ月経出ない時に出血が起こるのか、今回は不正出血の種類や原因と、その対策法をお伝えします。
そもそも不正出血って何?
ざっくり言うと「月経以外の出血」は全て不正出血です。色や量は関係ありません。
不正出血の原因は様々で、原因によって対処法も異なります。
中には、一刻も早く治療を行なった方が良い場合もあります。
不正出血の原因は?なぜ起こっているの?
排卵時出血
排卵時に卵胞が破裂した部分、または排卵後に形成される黄体からの出血です。
「卵巣出血」に分類され、いずれも生理的なことが大半で治療は不要です。
しかし卵巣出血の量が多い場合や、これに伴う腹痛や腰痛が生じる場合には治療が必要な場合もあります。
切迫流産・切迫早産
赤ちゃんが生まれても良い時期は妊娠37週0日以降で、これを正期産と言います。
赤ちゃんがお腹の外に出ても、医療の力を借りて生きていくことのできる時期に入る妊娠22週0日から妊娠36週0日の間の出産は早産と呼び、それ以前の妊娠22週未満の出産は流産と呼びます。
切迫早産とは早産になりかかっている状態で、頻回な子宮収縮に伴い、子宮の出口が開くことで出血を起こします。
妊娠期にこのような出血、特に鮮やかな赤い出血が見られた場合には、速やかにかかりつけの病院を受診しましょう。
萎縮性膣炎
加齢に伴い、卵巣からのエストロゲンというホルモンの分泌が減少すると、膣内の粘膜が薄く弱く傷つきやすくなり、萎縮して雑菌が繁殖しやすくなります。
黄色や茶色のおりものや、鮮やかな赤い色の出血が出ることがあります。
稀に子宮体がんなどの大きな病気が隠れている場合がありますので、閉経前後の女性でこのような症状が見られたら、一度は必ず病院を受診しましょう。
子宮頸管ポリープ
子宮の入り口にあたる子宮頸管の粘膜が増殖することでポリープができ、性行為や細菌感染などにより炎症を起こして出血することがあります。
子宮頸管ポリープは良性の病気ですが、時々悪性腫瘍(がん)がポリープ状となっている場合があります。
悪性腫瘍が疑われる場合はポリープを切除し、病理検査を行って良性である事を確認します。
明らかに良性で小さい場合は、切除をせずに経過観察をすることが一般的です。
粘膜下筋腫
子宮筋腫は大きく3つに分けられます。
子宮の筋肉の中にできる「筋層内筋腫」、子宮の外側に向かって筋腫が大きくなる「漿膜下筋腫」、子宮の内側にできる「粘膜下筋腫」です。
粘膜下筋腫は、子宮粘膜の下にできるため、月経時の出血の多さや貧血などで発見されることが多い病気です。
筋腫はできた場所や大きさによっては、妊娠期に切迫早産や出産時の微弱陣痛、産後出血などのリスクがあります。
このため、特にこれから妊活する予定のある女性は、妊娠する前に筋腫の有無や場所、大きさを確認しておき、妊娠中にも注意して観察する必要があります。
月経不順・無排卵性月経
月経は通常、25日〜38日の周期で規則的に起き、周期の変動は±6日以内であれば正常と言われています。
つまり、この周期以下や以上で起こる月経は月経不順であり、なんらかしらの原因があると言えます。
月経不順や無排卵性月経は、急激なダイエットやストレスによるホルモンバランスの崩れが原因となっていることが多く、心の悩みや不規則な生活によっても月経リズムが崩れる場合があります。
また子宮や卵巣、甲状腺などの原因によりこれらの症状が起きている場合もあります。
月経は、女性の体のバロメーターですから、不規則であることを当たり前と思わず、月経不順が疑われた場合には一度婦人科を受診してみましょう。
性交時出血
性交時出血は、問題ないものと重大な病気が隠れている場合があります。
例えば、最初の性交時には処女膜が破れる事により大半の女性が出血をしますし、性交に不慣れな時期も繰り返し出血を起こすことがあります。
また、排卵期(排卵時出血)や閉経後(萎縮性膣炎)にも性交時に出血を起こす可能性があります。
これらの原因以外に起こる、治療が必要な性交時出血として「子宮腟部びらん」や「子宮頸管ポリープ(前述)」「性感染症(尖形コンジローマ)」、「子宮頸がん」「子宮体がん」などがあります。
子宮腟部びらん
子宮と膣の境目にただれが生じている状態です。
月経のある女性の7割が、大なり小なりこの「びらん」があると言われています。
びらんがある場合、感染症にかかりやすくなります。
出血やおりものなどの困った症状がなければ、基本的に治療は必要ありませんが、症状に応じて膣洗浄や抗生物質の投与、またはレーザー治療などの切除術を必要とする場合もあります。
性感染症(尖圭コンジローマ)
ヒトパピローマウイルスを原因とする性感染症です。
ほとんどの場合、無症状で経過することが多く、主な症状としては外陰部周辺に尖ったイボができます。
イボはかゆみや痛みなどはなく、性交時に摩擦によってイボが破れ出血を起こします。
この病気は治療をしないで自然治癒することはありません。
注意すべきは、このヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんのリスクとなるということです。
症状がないため感染していることに気づいていない人も多く、不特定多数との性行為は性感染症だけでなく子宮頸がんのリスクも上げてしまうのです。
こんなことが原因の不正出血は要注意!
子宮頸がん
子宮頸がんにかかった人の90%が前述したヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因と言われています。
子宮頸がんの症状の1つとして、性交時を含む不正出血があります。
子宮頸がんは30歳代での発症が増加傾向ですが、これは多くの女性が20代で感染したHPVにより、30代で子宮頸がんを発症していることを意味しています。
最近は子宮頸がん検診の普及が進み、検診時に発見される60%以上はごく早期の上皮内がんである事が多く、早期発見により治療を行うことができます。
しかし稀に、妊娠してから子宮頸がんが発覚し、治療のために赤ちゃんを諦めなくてはいけなかったり、治療ができずにがんが進行しまったりするケースもあります。
このため20歳以上の女性には、2年に1回の検診が推奨されています。
子宮内膜増殖症
子宮内膜が厚くなりすぎて、出血をしてしまう状態です。
月経時の出血が多い、不正出血があるなどの症状から発見されることが多い病気です。
子宮内膜増殖症は、子宮体がんの前段階である場合もあるため、注意が必要です。
子宮体がん
子宮本体にでき、閉経後の50歳〜60歳くらいに多いがんです。
現在行われている子宮がん検診の多くは「子宮頸がん」のみのことが多く、子宮体がんの有無を調べるには、子宮の奥の内膜の細胞を採取する必要があります。
年齢や不正出血の有無で、子宮体がんの検査をする必要性が変わってきます。
もし不正出血の症状があるなら、受診時や検診時に必ず医師に伝えるようにしましょう。
不正出血って予防できるの?
原因によっては予防できないものもありますが、不正出血の原因の1つに自律神経やホルモンバランスの乱れがあります。
これらは生活習慣やストレス、食生活の乱れ、飲酒、喫煙によって起こります。
逆に言えば、原因不明の出血に関しては、こういった生活習慣が原因であることが多いのです。
つまり、乱れた生活習慣を整えることで、予防できる不正出血もあるのです。
不正出血は体からの大事なサイン!見逃さずに向き合って
月経によって出血が毎月ある女性にとって、不正出血は見逃しやすい体のサインの1つです。
しかし「毎月のように続く」「性交のたびに出血がある」「出血量が多い」「腹痛や腰痛を伴う」などの症状がある場合や強い場合には、速やかに受診をすることをオススメします。
婦人科受診は羞恥心などからハードルが高いと感じる女性も多く、受診が遅れがちです。
しかし不正出血がきっかけで発見でき、早期治療ができる病気もたくさんあります。
不正出血は、せっかくくれた体からのメッセージです。
どうか見逃さず、気になる症状がある時は早めに受診をするようにしましょう。
また月経不順などがある場合には、今一度、自分の心と体にかかっているストレスや、自分の生活や仕事の仕方を見直してみてはいかがでしょうか。