ある人材採用会社の調査で、転職希望の女性819名に「転職をする際、福利厚生を気にするかどうか」を質問した際、83%の方が「重視する」と答えました。
福利厚生とは、従業員が企業から得られる給料や退職金以外の報酬のことで、従業員のモチベーションをアップし、従業員やその家族の生活をより良くすることが主な目的です。
今回は、福利厚生の中でも企業の特色が出やすい「法定外福利厚生」に注目し、家計に優しい楽しみ方や活用術を紹介します。
「福利厚生」は大きく分けて2種類ある!
2017年、株式会社マイナビが社会人男性299人にアンケートを取ったところ、「自社の福利厚生の内容をよくわかっていない」と答えた人が3割ほどいることがわかりました。
福利厚生は、大きく分けると「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類があります。
まず、前者は健康保険や厚生年金、雇用保険などの社会保険や労働保険のことです。
なお、子ども・子育て拠出金(旧児童手当)もこれに含まれます。
一方後者は、住宅補助やヘルスケアサポート、ライフサポート(食事補助、介護・育児関連の補助)、慶弔関係など様々な種類があり、企業により大きく中身が異なるのが特徴です。
前者の「法定福利厚生」は、企業が当たり前に保障すべきものとして法で定められているので、今回は企業の特色が現れやすい後者の「法定外福利厚生」を重点的に紹介します。
企業の常識、法定福利厚生について知っておこう!
多様な法定外福利厚生について触れる前に、まずは企業の基本である「法定福利厚生」の中身を簡単に把握しておきましょう。
法定福利厚生とは、大きく分けると4種類からなり、従業員一人1ヶ月当たりの企業側の負担額は以下の通りです(2006年度 日本経済団連合会体調べ)。
- 健康保険、介護保険:31,646円
- 厚生年金保険:48,029円
- 雇用保険・労災保険:5,869円
- 子ども・子育て拠出金:1,041円
合計すると、約8万6000円になりますが、これは福利厚生費全体の8割弱を占めます。
少子高齢化の影響か、いわゆる社会保険と呼ばれる健康保険・介護保険・厚生年金は増加、労働保険は減少、子ども・子育て拠出金は大幅に増加していました。
社会保険については、上記と同金額を住民税等とともに支払うことが法律で義務付けられているのが辛いところですが、いざ病気を患ってしまった時や労災に見舞われた際などの保障はとても大切なので、欠かすことができない仕組みです
多様な法定外福利厚生について知ろう!
「法定外福利厚生」とは、企業が従業員の生活をより良くするために任意で行っている福祉的サービスのことです。
日団連の調査によると、従業員一人1ヶ月辺りの企業負担額は約25,000円となっており、約8万6000円にも上る法定福利厚生に比べると少額ですが、内容は多岐に渡ります。
以前は福利厚生というと慶弔関連が主でしたが、現在はそうでもないようです。
大まかな項目と具体的な項目について、以下の表にまとめました。
法定外福利厚生分類表
主な項目 | 具体的な中身 |
---|---|
住宅関連 | 社宅、住宅手当、持ち家の補助 |
医療・健康 | 医療・保健衛生施設運営、健康診断・人間ドック等の補助、インフルエンザワクチン、ストレスチェック |
ライフサポート | 社員食堂の運営、食事券配布、制服支給、生命保険関連、介護・育児のための休暇や時短勤務、財形貯蓄など |
慶弔関連 | 結婚祝金、出産祝金、入学祝金、傷病・死亡見舞金 |
文化・体育・レクリエーション | 書籍購入補助、部活動補助、社員旅行 |
共済会 | 共済会 |
福利厚生代行 | 福利厚生代行サービス |
自分の会社の福利厚生の仕組みを知ろう!
では、実際にこれらの法定外福利厚生(以下、福利厚生とする)を使うためには、まずは自社の福利厚生の仕組みや中身を知る必要があるでしょう。
大企業であれば、自ら希望する福利厚生を選択できる「カフェテリアプラン」を導入したり、中小企業は専門の福利厚生代行サービス会社と提携したりしているようです。
福利厚生のカフェテリアプランとは?
企業側が、従業員に対して所定の福利厚生の予算をポイント形式で付与し、従業員は所定期間内に利用したい福利厚生を選び、ポイントを消化して利用する仕組みのことです。
ポイントを使うことにより、通常よりお得に福利厚生を利用することができます。
1995年、日本で初めてベネッセコーポレーションがカフェテリアプランを採用したのをきかっけに、徐々に導入企業が増加、今では民間企業だけでなく健康保険組合や企業共済会、公共団体にまで拡大中です。
なお、カフェテリアプランは、「福利厚生倶楽部」やベネフィット・ステーションといった福利厚生代行サービス会社と連携しているパターンが多くなっています。
代行サービス会社を通すことで、全国的に利用しやすい施設(レジャー施設、育児・介護施設、スポーツ施設など)と連携し、全国に散らばる社員に平等かつ効率よくサービスを提供することができ、経費削減にもつながるのです。
大規模な福利厚生サービス会社の中には、全国で350万~700万人もの従業員が加盟しているところもあります。
カフェテリアプランは大企業に偏りがち!?
カフェテリアプランを導入している企業は、2002年度はまだ全国で30社しかありませんでしたが、2016年度には103社と3倍に増加しているものの、企業全体としては15.2%にとどまっています。
これはおそらく、福利厚生サービスを導入するにも大きなコストが掛かるからです。
法定外福利厚生は、社会保険等と違って義務ではいため、中小企業に比べると大企業の方が充実しているのは否定できません。
中小企業向けの福利厚生代行サービスもあります!
大企業は福利厚生の予算を確保しやすいですが、社員の少ない中小企業にとっては負担が大きく、福利厚生はカットされがちです。
そのため、中小企業で働く人々を対象とした企業がある地域を基盤とした小規模の福利厚生サービス会社も存在します。
例えば、大阪市中小企業勤労福祉サービスセンターでは、月600円の会費で慶弔給付や健康管理事業、レジャー施設の割引、ライフプランの相談など様々なサービスがあります。
こうした福利厚生サービス会社に言われるがままに加盟したという人も、利用したことがないという方は、ぜひ今一度、サービスの中身を確認してみましょう。
お財布に優しい福利厚生を紹介!
経団連が発表した2016年度の福利厚生費調結果によると、法定外福利厚生費用内訳の上位は、住宅関連が49%、ライフサポートが23.6%、医療・健康が12.5%となっていました。
具体的な内容は多岐に渡るため、これらの中からよりお財布に優しく、ぜひ利用してみてほしい福利厚生を厳選して紹介したいと思います。
住宅補助は必ずもらおう!
従業員一人の1ヶ月に掛かる福利厚生費の平均は約25,000円ですが、その約半分は住宅補助に使われています。
住宅補助の中には、住宅手当や持ち家援助、地方で単身赴任をする際の補助などが含まれており、企業独自のユニークな取り組みもあるようです。
例えば、著名人が寄稿していることで知られるアメーバブログを運営している株式会社サイバーエージェントでは、勤務地の最寄り駅から各路線2駅圏内に住んでいる正社員に対して毎月3万円の住宅補助、さらに勤続年数5年が経過すると、どこに住んでいても毎月5万円もの家賃補助が支給されます。
比較的小規模の会社であっても、家賃の補助は難しくても契約金(礼金や鍵交換等)の割引が効く場合があるので、社内の福利厚生の規約や提携しているサービス会社の中身をしっかり確認してみましょう。
健康診断を受けるとポイントがもらえる!?
元気に働き続けるためには、健康であることが大前提ですが、現代日本社会は諸外国に比べ労働時間が長く、過労死やうつ病などの精神疾患が社会問題化しています。
ある人材採用会社が正社員を希望する女性に行ったアンケートでも、「あるといいなと思う福利厚生」の第一位は健康診断や人間ドックの補助でした。
しかし、健康診断に行きたくても、仕事が忙しくなかなか病院へ足が向かないのが従業員の本音です。
そこで、こうした実情を踏まえ、従業員がより健康に気を配れるよう工夫している会社もあります。
例えば王手コンビニチェーンのローソンでは、従業員自身が健康的な行動をしたり、健康診断を受けたりすると「ローソンヘルスケアポイント」が付与され、通常のポンタポイントに変換(換金)できるシステムを導入しています。
健康な身体を維持しながら、お買い物に使えるポイントがもらえるのは、とてもお得です。
企業側にとっても、従業員が健康であることは、仕事の作業効率をアップさせ、疾病による離職率や休職率の低下につながるのでいい事尽くしです。
中小企業向けの福利厚生サービス会社でも、年一回と限定されますが、健康診断や人間ドックに掛かる費用の一部を助成する仕組みがあるので、もれなく利用しましょう。
多様な生き方を認めてくれるライフサポートも必見!
ライフポートというとあいまいですが、先ほどの表にある通り、食事の補助や育児・介護関連の休暇や時短勤務制度、生命保険、財形貯蓄など従業員のライフスタイルに関わる様々な項目が含まれています。
特に、毎日の食事をサポートしてくれる社員食堂の整備や食事チケットの配布は重宝されているようです。
ただし、食事券に関しては制約が多く、クオカードのように食事以外に使えてしまうカードは福利厚生費として献上できないので、株式会社エンジレットジャパンが運営している「チケットレストラン」のような「食事専用のカード」を使いましょう。
また、子育てに関連しては、育児休業を法定の1歳半よりも長い2歳までに延長したり、育休前後に面談を行い昇進に関する研修をしたりと、充実した取り組みをしている企業もあるので、最大限利用していきましょう。
また、財形貯蓄に関しては、最初に契約した額を給料からいや応なく天引きされるため、お金があればあるだけ使ってしまうようなタイプの人には便利な貯蓄方法です。
給料をもらいながら堂々と休める!?リフレッシュ休暇
他にも、自分自身をリフレッシュし、明日への活力を生み出すサービスとして「リフレッシュ休暇」を導入している会社もあります。
休める時期や日数は会社によって異なりますが、リフレッシュ休暇は給料をもらいながら休むことができる仕組みなので、お財布にも優しい制度です。
土日とくっつければ長期休暇も可能となる素敵な制度です。
ユニークな取り組みであれば、年に1回、一日だけに限って失恋休暇を取る事を認めていたり、35歳以下であれば自分探しの旅に挑戦しても最長6年まで復帰可能にしたりする会社もあります。
様々な割引サービスを活用しよう!
割引サービスの内容は実に様々です。
例えば、被服に関するものであれば、従業員の制服や作業着を支給するのは当たり前ですが中にはクリーニング代まで補助をしている会社もあるので、まだ利用していないお得なサービスがないか、よく確認してみましょう。
他にも、某有名リゾートや映画などの娯楽施設などレジャー施設のチケット代金が割引になるサービスもたくさんあります。
例えば、ディズニーランドのチケットが500円引きになったり、映画が定価の1,800円ではなく1,200円で見られたりといったお得なサービスです。
ご家族で休日にレジャーを楽しむ際には、自社の福利厚生でちょうどよいサービスがないか、よく調べてから計画を立てるようにしましょう。
福利厚生、どんどん利用して生活を豊かにしよう!
いわゆる福利厚生(法定外福利厚生)には、企業によって様々な特色があることがわかりました。
仕事に対するモチベーションを維持しながら元気に仕事を続けるためには、自分の会社の福利厚生を最大限利用することが大切です。
企業による健康管理やライフサポートなどの福利厚生を駆使し、より福祉的で充実した生活を送りましょう。