「産後の妻をサポートしたい」「我が子の世話に携わりたい」という気持ちから、「育児休業を取りたい」と考える男性は一定数いますが、平成28年度の厚生労働省の調査によると、実際に育休を取得した人の割合は、女性が81.8%に対して男性はわずか3.16%にとどまっています。
今回は、こうした現状の中でパパが育児休業を取るべきかどうか、また、そのメリットデメリットについて考えました。
育児休業の仕組みを知ろう!
出産に関わる「休業」は、出産・育児に伴う夫婦の負担を軽減する法律、「育児介護休業法」で保証されています。
妊婦が対象の休業としては、産前休業(出産予定日6週間前)と産後休業(産後8週間は就業不可)がありますが、今回注目するのは男女関係なく取得することができる「育児休業」です。
まずは、育児休業の仕組みを理解し、現代社会のパパの育休事情を押さえましょう。
育児休業が取得できる期間はいつまで?
「育児休業(以下、育休とする)」とは、1歳未満の子どもを育てる男女の労働者を対象にしたもので、会社に申請することで子どもが1歳になる誕生日の前日まで取得することができます。
また、「パパママ育休プラス」という制度を利用すれば、父親と母親がかわるがわる育休を取ることで、1歳2ヶ月まで育休を延長することも可能です。
さらに、「子どもが1歳になったのに、保育園が激戦区で入れなかった」などの特別な事情がある場合は、最大1歳6ヶ月まで延長することができます。
育休を取得できる条件・できない条件を知っておこう!
元々正社員で数年の勤務経験があり、産後の復職後も引き続き同じ職場で働くといった人であれば、会社に申請すれば比較的スムーズに育休を取得することができます。
しかし、短期契約の派遣社員やパート社員の場合、育休を取得するためにはいくつかの条件があるので注意が必要です。
詳しい条件は以下の通りです。
労働契約期間が決まっている方が育休を取るための条件
同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている
子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる
子どもの2歳の誕生日の前々日までに労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでない(契約が更新されるのかどうかが不明)
※以下の条件に当てはまる場合は、育児休業が取れません
雇用期間が1年未満である
1年以内に雇用関係が終了する
週の所定労働日数が2日以下日
雇い労働者の方
これらのルールから、勤務経験が浅いうちは育休が取得できないのは確かなので、妊娠のタイミングについては夫婦でよく話し合い、計画的に妊活する必要がありそうです。
パパが知っておきたい「パパママ育休プラス」制度の仕組み
育休制度の上記のルールに加えて、これから育休を取りたいと考えるパパに知っておいてほしいのが、平成21年度の法改正で導入された「パパママ育休プラス制度」です。
この制度では、母親と父親の両方が育児休業を取得する際、一定の条件に当てはまる場合に限り、育休を最大1歳2ヶ月まで延長することができます。
「パパママ育休プラス」の利用条件とは!?
育休を取得したい労働者(本人:父の場合も母の場合もある)の配偶者が、子どもが1歳に達する誕生日の前日までに育児休業をしていること
本人の育児休業開始予定日が、子どもの1歳の誕生日より前であること
本人の育児休業開始予定日が、配偶者の育休の初日以降であること
なお、育児休業を取得できる期間はこれまで通り1年間です(女性の場合は産後休業8週間を含む)。
「パパママ育休プラス」が利用できるパターンを学ぼう!
以下の条件において、パパママ育休プラスが利用できるパターンについて見てみましょう。
- 子どもの出生日:平成22年10月10日
- 通常の育休取得可能期間:平成23年10月9日まで
- パパママ育休プラスにより延長可能期間:平成23年12月9日まで
パターン1.母親の復職にあわせて、父親が育休を取得
H22.10/10~H23.10/9(1歳到達) | H23.10/10~H23.12/9 | H23.12/10~ | ||
---|---|---|---|---|
母 | 産後休業8週 | 母 育児休業 | 復職 | |
父 | 仕事 | 父 育児休業(2ヶ月) | 復職 |
パターン2.母親の育休と父親の育休を重ねて取得
H22.10/10~H23.10/9(1歳到達) | H23.10/10~H23.12/9 | H23.12/10~ | |||
---|---|---|---|---|---|
母 | 産後休業8週 | 母 育児休業 | 復職 | ||
父 | 仕事 | 父 育児休業(2ヶ月) | 復職 |
※母親と父親の育休が重複してもかまいません。
パターン3.母親が早めに復職し、父親が育休を取得
H22.10/10~H23.10/9(1歳到達) | H23.10/10~H23.12/9 | H23.12/10~ | |||
---|---|---|---|---|---|
母 | 産後休業8週 | 母 育児休業 | 復職 | ||
父 | 仕事 | 父 育児休業(2カ月) | 復職 |
パターン4.父親が育休を分割して取得
H22.10/10~H23.10/9(1歳到達) | H23.10/10~H23.12/9 | H23.12/10~ | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
母 | 産後休業8週 | ※空白期※ | 母 育児休業 | 復職 | |||
父 | 父 育児休業1回目 | 復職 | 父 育児休業2回目 | 復職 |
※特殊な例ですが、父が育児休業を早くに取得したことで、母親の育児休業を10月10日以降にずらすことができています。
ただし、育児休業はあくまでも1年間までしか取れないので、産後休業の後に空白の期間ができてしまうのが難点です。
「パパママ育休プラス」が適応できないのはどんな時!?
条件は上記と同じまま、今度はこの制度が利用できない場合について言及します。
一見、上記の表とあまり違いがないようですが、微妙な日付の違いで「パパママ育休プラス」制度を利用できないことがあるのです。
H22.10/10~H23.10/9(1歳到達) | H23.10/10 | H23.10/11~12/9 | H23.12/10~ | ||
---|---|---|---|---|---|
母 | 産後休業8週 | 母 育児休業 | 復職 | ||
父 | 仕事 | 父 育児休業不可 |
※父親が育休を開始できるのは10月10日までのため、11日以降から休むことはできません。
H22.10/10~H23.10/9(1歳到達) | H23.10/10 | H23.10/11~12/9 | H23.12/10~ | |||
---|---|---|---|---|---|---|
母 | 産後休業8週 | 母 育児休業(延長不可) | 復職 | |||
父 | 仕事 | 父 育児休業 | 復職 |
※父親の育児休業開始が遅いため、母親にはパパママ育休プラスは適用できません。
女性が育休制度を利用できるのはあくまでも「1年間まで」ということです。
現代社会における父親の育休取得事情とは!?
厚生労働省による「平成28年雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得割合は、過去最高とはいうものの数値としては3.16%にとどまっています。
出産を終えたばかりの女性が身体を休めたい「産後8週間(産後休業)」の間に育休を取得した男性の割合に至っては、わずか1.49%です。
一方、日本労働組合総連合会の「パタニティ・ハラスメントに関する調査」によると、約7割の方が育休制度について認知しており、詳しい内容についても半数の人が知っているというデータもあります。
それにも関わらず、実際に「男性でも子育てしながら働くことができる」と考える人は、2割ほどしかいないのです。
やはり、現在の一般企業では、育休制度を利用した男性社員をフォローする環境が整っておらず、男性が仕事を休んでまで子育てに携わることに対し、まだまだ理解が深まっていないことが考えられます。
育休中も働けるってホント!?はたらく育休とは
このように、男性の育休に対する風当たりが強い中、今後のパパの育休率を上げていくためには、仕事と育児を両立するための制度をよく知っておく必要があります。
そこで、育休中の勤務ルールや得られる給与について知っておきましょう。
実は育休中でも月80時間働ける!?
育児休業は「休業」とつくだけあって、“完全に仕事から手を引き、在宅で育児と家事のみに専念する”というイメージがあるかもしれませんが、実はそうではありません。
会社と調整した上で、「今は父親が子どもの世話をする必要がない」と判断される期間に限ってのみ、一時的・臨時的に事業主の下で仕事をすることが認められているのです。
しかも、その業務内容が一ヶ月10日未満(10日以上であれば80時間)以下であれば、育児休業給付金がカットされることもありません。
「一時的・臨時的」という言い方は曖昧ですが、以下のようなパターンがあります。
- 大災害が発生して人手不足が生じ、育休中の従業員の手がどうしても必要になった場合、出社や電話対応を会社側が求め、本人がそれに合意した場合
- 突発的に生じた事態に対応するために、会社側と合意した上で、育休中の従業員本人にしか対応できないような臨時業務を行う場合
ただし、あらかじめ決められた時間や特定の曜日のみ勤務してしまうと、定期的に働いていると理解され、「一時的・臨時的」とみなされず、一時的育児給付金は給付されなくなってしまうので気を付けましょう。
育休中も通常給与の8割を確保できる!?
では、育休を取った場合、給料は実質どれほど減額されてしまうのでしょう。
以前は育休中の給与は半額しか保証されませんでしたが、平成26年度に制度変更により、現在は育休中も給与の67%が保証されるようになりました。
しかも、育休中は「所得税」「社会保険料」「雇用保険料」の3つが免除されるため、最終の手取り金額を比較すれば実質元の給与の80%近くが確保できるのです。
父親の収入イメージ
育児休業前
項目 | 金額 |
---|---|
給与 | 230,000円 |
所得税 | -5,000円 |
社会保険料 | -30,000円 |
雇用保険料 | -1,200円 |
住民税 | -15,000円 |
★手取り | 178,800円 |
育児休業中
項目 | 金額 |
---|---|
育児休業給付金 | 154,100円(23万×67%) |
所得税 | 0円 |
社会保険料 | 0円 |
雇用保険料 | 0円 |
住民税 | -15,000円 |
★手取り | 139,100円(育休前の約78%) |
この例では、手取り金額が8割ジャストには届いていませんが、前述したように育休取得中のパパ本人にしかできない臨時的な仕事を少し引き受けることで、8割に到達することも不可能ではありません。
ただし、8割を越えて稼いでしまうと、今度は逆に育児給付金が減額されてしまうので注意が必要です。
パパは育児休業を取るべき?育休を取ることのメリット
子どもが1歳になるまでは、男性も育児休業を取る権利があること、そして休業中でも8割近くの収入が得られる事がわかりました。
では、実際にパパが育休をとった場合のメリットについて見てみましょう。
育児休業は出世への近道!?育児休業から得られる能力・適正がある!?
スウェーデンでは「両親休暇」制度の先進国ですが、「スウェーデン企業におけるワーク・ライフ・バランス調査(2005)」によると、役員の9割が育児休業の取得経験があるそうです。
つまり、「育休を取得した方が出世しやすい」ということが考えられます。
なぜなら、育休を取得し、生まれたばかりの赤ちゃんと向き合う間に「リスク管理能力」や「タイムマネジメント」、「ストレス耐性」、「同時並行遂行能力」、「より広い視野」など総合的な人間力が身に付くからです。
また、育休を取るにあたって、仕事を後輩へ引き継いだり、後輩を育成したりする力も育つといえます。
さらに、育休経験者は、「後輩のために育休の取りやすい環境を作りたい」「上に立って育休制度を改善したい」と考えるため、出世欲が高まるとも言えます。
父親の自覚&子どもへの愛着形成、産後クライシスの回避!
父親の育休は出世につながるだけではありません。
なにより効果的なのは、会社を休んで育児や家事に携わることで、「自分はこの子の親である」という「父親としての自覚」が芽生えることです。
産後の女性は、体調の回復にも時間がかかりますし、ホルモンバランスの崩れから産後うつになる可能性もあります。
このように妻が身体的・精神的に辛い時期に夫が育児や家事に対して非協力だった場合、「産後クライシス」といって、産後2年以内に夫婦の愛情が急速に冷え込み、離婚の危機に陥ることもあるのです。
実際、子育て経験のある女性の半数が「産後クライシスを感じたことがある」と回答したアンケートデータもあります。
産後クライシスを避けるためにも、父親の育休取得は有効です。
新しい夫婦関係の構築、家庭内の役割の固定化を防ぐ!
さらに、父親の育休取得は、夫婦の関係を再構築し、家庭内における夫婦の役割固定化を防止することにも役立つと考えられます。
かつての日本社会では、専業主婦が多いことで「父親が一家の稼ぎ手」「母親が子どもの教育・世話係」という考え方が世論の多くを支配していました。
しかし、現在の日本社会では、むしろ共働きの家庭の方が増えているため、母親も一家の稼ぎ手になったことで、「子どもの教育係・世話係」を夫婦で分担することが求められています。
しかし、女性は、自ら子どもを産んでいる以上、本能的に赤ちゃんのお世話をしやすい一面がありますが、父親は母乳も出るわけでもなく、赤ちゃんのお世話一つひとつを習得するにも時間がかかるのも事実です。
こうした点から、「子どもの世話や教育」方法をスムーズに習得するためにも、父親が一定期間育休を取得して子育に専念する時間が必要といえます。
男性育休のデメリットを乗り越えよう!
先ほど述べた父親の育休メリットを享受するためには、「育休取得者の少ない職場環境」「仕事や昇進に影響が出るかもしれない」といったデメリットを乗り越えていかなくてはなりません。
最後に、男性が育休を獲得するための課題や乗り越え方についてまとめました。
上司には早めに相談!復職後も高い意欲で働く宣言!
妊娠が判明し、出産予定日が決まって母子手帳を発行する頃には、出産まで約8ヶ月に迫っています。
男性は、妻の出産予定日が分かり次第、最低でも数か月前には「育休を取得したい」という強い意思を上司に相談してみましょう。
その際、休業するまでの引き継ぎや休業中の対応策を具体的に上司に提案し、一人で悩まずに一緒に考えてもらうことが大切です。
育休取得時期や期間などをより具体的に話すことで、“父親の本気度”を理解してもらいやすく、育休取得の実現につながります。
また、復職後は「危機管理能力」や「タイムマネジメント能力」などをパワーアップさせた上で、より高い意欲で働くことを宣言しておくのも効果的でしょう。
法律を盾に職場の理解を得よう!評価準等も明確にしておこう
職場の理解が得られず育休を取得し辛い空気がある時は、「法律として育休が認められていること」を会社に示唆しましょう。
育児休業は働く女性、男性に平等に与えられた権利であり、法律で守られています。
自信を持って会社に主張しましょう。
ただし、育休を取ったことで職場環境が悪化するようなことがあっては本末転倒なので、育休を取得したことで「評価がどう変化するのか」「昇進・昇格基準にはどのような影響があるのか」などについてはあらかじめ明確にしておくことも重要です。
職場での関係を事前に気づいて、パパも育休取得の検討を!
現在の日本社会では、男性の育児休業取得割合はまだまだ低いのが現状です。
しかし、育休制度をうまく利用すれば、半年間は元の給与の8割を確保できますし、なにより子どもへの愛着形成や良い夫婦関係を築けるという大きなメリットがあります。
職場での根回しを入念に行う必要はありますが、これからはパパも勇気を出して育休取得を目指してみてはいかがでしょうか。