2005年~2014年の間に、東京都内だけで40人もの女性が産後1年未満に自殺したというデータがあります。
そのうち半数の人は産後うつとも呼ばれる「育児ノイローゼ」を患っていたようです。
今回は「育児ノイローゼ」の症状と、その対処法や予防法にいて紹介します。
他人事ではない!「育児ノイローゼ」とは?
誰でも初めての子育ては手探りのことが多く、戸惑うこともあるでしょう。
大抵の場合は周囲の協力も得ながら育児をこなしていきますが、中には泣き止まない赤ちゃんに対してイライラが抑えられなかったり、家事が手につかなくなったりするほど落ち込む人がいるようです。
そのような場合は、育児ノイローゼになっているのかもしれません。
育児ノイローゼとは?
育児ノイローゼとは、育児に対する不安や悩みを解消することができずストレスが溜まり、追いつめられた結果、精神的に不安定になる状態を表します。
悪化すると、子どもへの虐待や母親自身の自殺につながる可能性もあると言われています。
実際に、妊産婦の死亡率に関しては、胎児の病気や出血など「出産トラブルによる死亡率」よりも「自殺による妊産婦の死亡率」の方が高いというデータもあります。
育児ノイローゼは誰でもなる可能性が・・・
1967年に発行された育児書には「『育児ノイローゼ』は核家族化時代の犠牲であり、育児は重労働で女性の一生でいちばん骨の折れる時代」と記載されており、育児のノイローゼの問題が数十年前から存在していたことがわかります。
また、厚生労働省の「育児と介護と仕事の両立に関する調査」によると、子育てをした約40%の人が「自分は育児ノイローゼかもしれないと思ったことがある」と答えました。
育児ノイローゼは、誰にでも起こり得る身近な問題なのです。
育児ノイローゼの症状とは?こんな症状が出たら要注意!
以下の項目をご覧ください。
自分の気持ちや行動として当てはまるものが複数あれば、すでに育児ノイローゼになっている可能性があります。
自分で項目をチェックし、自分の精神状態を見つめ直してみましょう。
育児ノイローゼの症状例
- 些細なことでイライラする
- 家族にそのイライラをぶつけてしまう
- 育児を完璧にこなしたいと思う
- 自分だけが頑張っている気がして孤独感を感じる
- 子どもをかわいいと思えない
- 子どもに思わず手を上げてしまうことがある
- 家事をやる気が起きず、趣味などにも興味が湧かなくなる
- 他人との会話が億劫になり、社交性がなくなる
- 思考力が低下している
- マイナス思考になる
- 拒食や過食の傾向がある
- 体重が激減している
- 突然涙が出る
- 寝付きが悪く、熟睡できない
- ぐっすり寝ても疲れが取れない
育児ノイローゼになる原因とその背景とは?
育児ノイローゼになる原因は人によって様々ですが、妊産婦の元々の性格に起因する場合や、産後のホルモンバランスの乱れ、ワンオペ育児と呼ばれる孤独な育児環境などがあります。
産後のホルモンバランスと自律神経の乱れ
女性は産後、身体が産前の状態に戻ろうとすることで体内のホルモンバランスが乱れます。
また、新生児は2~3時間起きの授乳があるため睡眠時間が細切れになり、自律神経が乱れて睡眠障害や睡眠不足になりがちです。
こうした産後特有の母親の精神的な不安定さをきっかけに、育児ノイローゼにつながることがあるようです。
夫の理解と協力が得られない
夫が仕事で多忙なためなかなか育児に時間が割けず、妻が育児の悩みを一人で抱え込むことが原因になる場合もあります。
赤ちゃんと接する時間が少ないためか父親としての自覚がなかなか芽生えず、「靴下をはかせて」と訴えるなど、大きな長男のようになるパパもいるようです。
こうした夫の育児に対する理解の無さは、お母さんにますます孤独感を抱かせることにつながります。
真面目で責任感があり完璧主義な人は要注意!
育児ノイローゼになるのは、母親の性格によるところもあるようです。
元々真面目で、何事も完璧にこなしたいという人は、自分の理想の育児と現実とのギャップが受け入れられず、自己嫌悪に陥る場合があります。
育児も家事も完璧にこなしたいと思うあまりに、オーバワークになってしまうのです。
核家族化や共働きの増加も育児ノイローゼに影響している!
現代の日本社会は、核家族が増加の一途をたどっています。
核家族の家庭では、なかなか気軽に両親の手を借りることができません。
三世帯住宅であれば、少しの間だけ両親に子どもを見てもらっているうちに家事に集中するなど、母親の負担をすぐに減らすことができますが、核家族ではそうはいかないものです。
こうした現代社会の生活スタイルのも、母親の育児を孤独化させる一因になっていると言えます。
育児ノイローゼの対処法&予防法を紹介!
最後に、実際に育児ノイローゼへの適切な対処法と予防法を紹介します。
育児ノイローゼに対する対処法は、予防につながる部分もあります。
自分は「育児ノイローゼかもしれない」あるいは「パートナーが育児ノイローゼかもしれない」と感じたら、すばやく対応を心がけましょう。
早めの対処することで育児ノイローゼの悪化を防ぎ、子どもの虐待や母親の自殺を阻止できるのです。
外へ出て、誰かに悩みを打ち明けよう!
まずは、自宅に閉じこもるのをやめ、外へ出ましょう。
外出先は近所からでも構いませんが、可能であれば地域の保健センターや子育て支援センターに行くのがオススメです。
育児に関する知識が豊富な保健師や保育士が常駐しており、無料で相談が行えるので、まずは専門家に自分の悩みを話してみましょう。
誰かに悩みを打ち明けることで、追いつめられた現状を客観的に受け止めることができ、少し落ち着きを取り戻すことができます。
また、専門家からアドバイスをもらうことで、具体的な解決の糸口が見つかることもあります。
夫や家族の協力を仰ごう!
育児ノイローゼの状況を打開するためには、夫や両家の両親のサポートが欠かせません。
夫も最初は育児が不慣れで妻も不安を抱くかもしれませんが、回数をこなせばおむつ替えや沐浴などは案外男性の方が丁寧にする場合も見られます。
多忙な夫を気遣う気持ちもあるかもしれませんが、夫も子どもの父親です。
思い切って気持ちを打ち明け、協力を仰ぎましょう。
自分から助けを求められない場合は、保健師さんから自宅に声をかけてもらう方法もあります。
育児ノイローゼになりやすい性格を理解しよう!
先ほどのチェック項目でも挙げた通り、元々真面目な性格で、完璧に育児をこなそうとする人は育児ノイローゼになりやすい傾向があります。
そういう人は、育児を100%の力を出し尽くすのではなく6~7割のパワーで止めるように意識しましょう。
例えば、家事の手を抜く方法を考えるとか、夫に育児や家事の分担をお願いするなどして、自分が一人で抱えている育児を意識的に分散させ、肩の力を抜くことが大切です。
また、全ての家事・育児を完璧にこなそうとするのではなく、「今日は洗濯できなかったけどOK!」「子どもが泣いて大変だったから、食事は簡単なものにしよう!」など、出来ない自分を許してあげることも重要です。
さらに、妻が真面目な性格の家庭では、「家事をしない自分を夫がどう思うか」という面を気にしている場合も多々あります。
そのため、家事ができていないことを責めるのではなく、パートナーが自ら進んで「疲れてるだろうから、お惣菜買って帰ろうか?」「洗い物は後にして、今はゆっくり休んで」と声をかけてあげることで、妻の気持ちが軽くなり、育児ノイローゼを防ぐことが出来ます。
時には息抜きも大切!自分に相応しいストレス発散方法を見つけよう!
育児ノイローゼにならないためには、ストレスを上手に発散できているかという点も重要です。
たまには夫に子どもを預け、美容院やエステ、ショッピングなどに出かけたり、ゆっくり寝られる時間を作るのも良いでしょう。
育児中は「子どもを預けて出かけるなんて…」と思いがちですが、母親になっても一人の女性であることに変わりはなく、24時間365日母親業だけに専念する必要はありません。
たまの1日は自分だけの楽しい時間を作り、ストレスを発散することで子どもに笑顔で接することが出来るのであれば、その方が子どもの情緒や成長にとってもプラスになります。
夫の仕事が忙しくなかなか預けられない時は、保育園で実施されている一時保育や、自治体の一時預かりサービスを利用すれば、経済的な負担をそれほどかけずに子どもを預けることが可能です。
一時保育・一時預かりの料金や予約方法は、住まいの市区町村のホームページに子育て支援情報として掲載されていますので、一度確認してみましょう。
また、外出が難しいと感じる人でも、家庭でできるストレス発散法はたくさんあります。
例えば、観葉植物や植木・お花を育てる、歌を歌う、好きなお菓子を食べる、大好きな音楽を聴く、リラックス効果のある入浴剤を入れて入浴するなどです。
自分に合ったストレス発散法を見つけ、上手に息抜きをすることで、育児ノイローゼを予防しましょう。
育児ノイローゼの対応・予防は夫婦の成長につながる!
育児ノイローゼに対応し、悪化を防ぐためには、夫の協力が不可欠です。
そのためには、夫も育児ノイローゼについて学習する必要があります。
ぜひ、夫婦で育児ノイローゼについて考える時間を持ってみてください。
「育児ノイローゼ」を対処法や予防法について夫婦で話し合うことは、夫婦の絆を深めることにもつながることでしょう。