「不妊」と聞くと、女性側の原因と思う人も多いと思います。
しかし、実は「不妊」の原因の半分は男性側にある事は、ご存知でしょうか?
今回は、早めに知っておきたい男性不妊の原因について考えていきましょう。
不妊の原因は男性にもある!あまり知られていない男性不妊とは?
そもそも「不妊症」ってどんな病気?
妊娠を希望している健康な男女が、避妊をしていないで性交渉をもっているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものを「不妊」と言います。
一定期間については、現在は「1年間」というのが定義となっていますが、男性も女性も年齢を重ねるにつれて、妊娠がしづらい事がわかっています。
また、一定期間を満たしていなくとも「女性の排卵がない」「子宮内膜症を合併している」「過去に骨盤腹膜炎などの病気を患ったことがある」「性感染症にかかった事がある」といった状況の方は妊娠しにくいことが分かっているので、早めに専門医にかかる事が大切です。
男性不妊には先天性と後天性があるって本当!?
男性不妊の原因が先天性である場合は、様々な遺伝的要因に加え、発育段階で受けた影響などで性機能不全となります。
性機能不全とは、性的な欲求や興奮とその最高潮などが減退や欠如した状態の事をいい、主に下記のようなものを指します。
- 勃起の状態や持続時間が保てず十分に性交渉が持てない、又は行えない状態の「勃起障害(ED)」
- 射精が早期に生じてしまい性交渉に満足感を得ることが出来ない「早漏」
- オルガスムスに達せない又は時間がかかり過ぎてしまう事によって、射精が困難となり、満足感を得る事が出来ない「オルガスムス障害・遅漏」
男性不妊においての後天的な原因としては、ストレス・飲酒・喫煙・肥満などの生活習慣に深く関係する内容や、糖尿病・病気や投薬によっての影響・精巣の損傷や機能障害
精子の産出・射精に関してのトラブルといった身体的な問題など、さまざまな原因が挙げられています。
男性不妊の原因はここにあった!?知っておきたい病気の種類!
男性の不妊の原因は約90%が「造精機能障害」!
造精機能障害とは、精子を作り出す機能自体に問題が生じるために、精子を上手く作れない状態の事を言います。
これは、精巣やホルモン分泌などの異常により、障害を引き起こすとされています。
通常では、一度の射精で放出される精子の数は数億とされ、そのうちの99%が子宮の手前で死滅します。
子宮内に到達できる数は数十万以下まで減り、そこから卵子の周囲まで到達できる精子は
数百以下となります。
その為、精子の数が少数であったり、精子の運動性が乏しいと卵管にまで到達できる精子の数も減少してしまうので、なかなか妊娠が出来ない状況が作られてしまうのです。
造精機能障害になる原因自体は、原因不明の場合が大半ですがさまざまな原因も考えられます。
無精子症
精液の中に精子が全く存在しない状態を無精子症と言い、造精機能障害の中でも最も重い症状となっています。
しかし、無精子症だからと言って絶対に妊娠が不可能という訳ではなく、精巣や精巣上体に精子が存在していれば、顕微授精などでの治療は可能です。
乏精子症
乏精子症は、精液中に精子は存在しているけれど、その総数が少ない状態を言います。
精子の数によっても治療の方法が変わり、精子の数が基準を少し下回る程度であれば「タイミング法」、基準より大幅に少なくなってくると「人工授精」や「体外受精」などにステップアップした治療を行います。
精子無力症
精子の数は正常に作られているけれど、製造された精子の運動率が悪い状態の事を、精子無力症と言います。
精子の状態にもより治療法も変わりますが、乏精子症と同様にタイミング法や体外受精、人工授精などで妊娠につなげていくのが一般的です。
精索静脈瘤
精巣や精巣上部に流れる精索静脈に、こぶ(瘤)が出来てしまう症状をいいます。
精索静脈瘤がある事によって、腹部から逆流した温かい血液が精巣に流れます。
すると、精巣の温度を上昇させてしまうので、精子を作る働きに悪影響を与えてしまうと考えられているのです。
精索静脈瘤は発見された場合は、外科手術により取り除く治療を行う事ができます。
精巣炎
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)・扁桃腺・蓄膿症などの感染症に疾患した後に、血液を介し精巣に感染して起こる病気です。
成人になってから精巣炎を発症すると、精子の数が減少してしまったり運動性が低下する可能性があり、男性不妊の原因になっています。
精子は正常でも管に問題がある「精路通過障害」
精子は精巣の上部にある「精巣上体」で貯蔵され、性的刺激を受ける事によって精管(精子を精巣上体から射精管まで運ぶ管の事)・精嚢を通過し、尿道に運ばれます。
そして性的興奮が絶頂に達するとともに陰茎から射精されます。
精巣で精子はしっかりと製造されているのにも関わらず、精子が通る道がふさがっている、又は何かしらの原因で狭くなって上記の一連の流れに問題が起こっている状態の事を、精路通過障害と言います。
精路通過障害にも先天的・後天的な原因が存在し中には原因不明な場合もあります。
先天性精管欠損症・精巣上体炎
生まれた時から精管が備わっておらず、精子が放出されず精巣内に閉じ込められている状態を、先天性精管欠損症といいます。
また、精巣上体が細菌(原因は性感染症のクラミジアや結核など)に感染し炎症を起こした状態を「精巣上体炎」と呼びます。
精巣上体炎を発症すると、精子が通る精管がふさがってしまう事があり、妊娠しにくい状況を作ってしまうのです。
感染症による症状の出現であれば、抗菌薬を投与して治療を行いますが、炎症による傷みや腫れは数カ月続く場合もあります。
精管欠損により、精子が外に出られない状態の場合は、手術によって通路を作る治療ができるケースもあり、受診して詳しい検査が必要です。
逆行性射精
逆行性射精は、正常に勃起し射精はされるものの、精液が膀胱に逆流してしまい尿道から射出されない病気のことです。
射精をした感覚はあるにも関わらず、精液が全く出ていない、もしくは非常に少量となります。
糖尿病などに伴った神経障害が発症する原因となっている事もあります。
逆行性射精自体は体に害を与えるものではないので、妊娠を希望していない場合は特に治療などは必要ありません。
逆行性射精は投薬により治療する事はできますが、とても難しいものとなります。
その為に妊娠を希望する場合は、逆行性射精そのものの治療をして妊娠を目指すのでなく、精子が正常な状態ならば「人工授精」や「体外受精」などを受ける事が1つの選択肢となるでしょう。
鼠経ヘルニア・パイプカット手術後
幼少時に鼠径ヘルニア(脱腸)の手術を受けた事がある人では、手術部位に精管が走行している為、精管が塞がってしまっている場合があります。
また、パイプカット(精管結紮術)とは、精巣でつくられた精子を尿道に送る「精管」を切り離す避妊手術を指し、生殖機能(精液は出るが精子は含まれない)が意図的に失われた状態です。
精子の通り道がふさがっている状態の場合、顕微鏡を使い再建の手術をする事によって妊娠も不可能ではなくなりますが、再建したからと手術前の状態に戻る訳ではありません。
精子の生産機能の低下などにより、必ずしも妊娠に繋がるとは限らないので注意が必要です。
子供が欲しいなら夫婦のどちらかではなく、2人でしっかり向き合おう
女性側の不妊に関しては良く耳にしますが、男性不妊はまだまだ聞きなれない人も多いと思います。
男性不妊には先天性が原因な場合もありますが、ストレスなどの心因性・喫煙や飲酒などの生活習慣が原因となっている事もあります。
不妊症の治療は、夫婦のどちらかだけの努力では行う事は出来ません。
共に考え支え合い前向きに問題改善に進めるためにも、夫婦でよく話し合い時に専門医の力も借りて、妊活に取り組めるといいでしょう。
不妊症の検査を詳しく知りたいという方は、「不妊症の検査って何をするの?いつ病院に行くのがベスト?」を参考に読んでみてください。