みなさんは、“小1の壁”と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
国語や算数など本格的なお勉強が始まることも1つですが、「自立への一歩」を踏み出すための見えにくい「壁」が存在しています。
そこで今回は、小学校入学後に起こりやすい問題、“小1の壁”に着目し、親子で乗り切るための解決策をまとめました。
登下校時は危険がいっぱい!?手は離しても目は離さない!
まずはじめ、命にも関わる重要な登下校時の問題について考えてみましょう。
海外の小学校では、治安が悪いためスクールバスを利用するのが当前の国もありますが、日本の多くの公立小学校では子どもたちだけで登下校するのが一般的です。
しかし、日本でも幼い子どもを巻き込んだ凶悪な犯罪や事故は絶えず、登下校時の問題は大きな小1の壁と言えるでしょう。
そこで、交通ルールや防犯対策については、入学前から対策を練っておく必要があるでしょう。
交通ルールを親子で確認しよう!
小学生は園時代のような親の送迎はないので、子どもだけでも安全に登校できるよう入学前の春休みの間に親子で登下校の練習をしておくことをオススメします。
その際、以下のような交通ルールの基本を親子で確認しておきましょう。
- 歩行者は基本的に右側通行(ただし、道路状況によっては左側の路側帯の中を歩いた方が安全な場合もあるため、柔軟に対応すること)
- 路側帯(白い線)やスクールゾーン、緑の線等がある場合は、必ずその内側を歩く
- 路側帯の中でも建物側に近いところを歩く
- 道路を渡る際は信号を守る(歩行者用の信号を見る、渡る前に点滅し出したら渡らない、横断中に点滅したら素早く渡りきる)
- 道路を渡る前には右を見て、左を見て、もう一度右を見て車が来ないか確認してから渡る
- 道路を渡るときは横断歩道、歩道橋を利用する(手をあげて渡る、渡る前に左右を確認する)
- 踏切を渡る際は左右をよく確認し、警報が鳴りだしたら渡るのを諦め、閉まっている遮断機を越えてはいけないなど
ご近所の方とのお付き合いも大切にしよう
最近は少子化の影響もあり、子供たちが決められたグループで集団登校している風景もあまり見られなくなっています。
そのため、ご近所同士の付き合いもある程度大切にし、親子で顔見知りになっておくことは大切です。
ご近所のお友達と声を掛け合って複数で登下校することは、命の危険から身を守ることにつながります。
自治体によっては、何かあった場合に駆け込むことができる「子ども110番」の家を設定しているところもあるので、事前に親子で確認しておきましょう。
すぐに助けを呼びに行けるし、交通ルールを守るように注意し合えるので、一人で登下校するよりも、複数で登下校した方が安全性は高いのは確実です。
小学校によっては、交差点等で親が旗を持って立つ「旗当番」という面倒なシステムがあるところもありますが、安全上重要ですし、子ども達の自然な姿を見ることが貴重な機会でもあります。
親子で不審者対策を話し合っておこう
不審者対策の一つに、登下校中に不審者等が現れた場合に小学校や保護者宛に連絡してくれる「防犯メール」という仕組みがあります。
地域にもよりますが、小学生への声掛け事案など不審者情報が意外と頻繁に送られてくるので、登録することをオススメします。
そして、残念なことではありますが、子どもの命を守るためには以下のような不審者対策を親子で話し合い、決めておくことが大切です。
覚えやすいように「いかのおすし」という不審者対策標語を1つ紹介しておきます。
- 【いか】知らない人について「いか」ない
- 【の】知らない人の車に「の」らない
- 【お】あぶないと感じたら「お」お声を出す
- 【す】「す」ぐ逃げる
- 【し】大人の人に「し」らせる
防犯ベルやキッズケータイを活用しよう!
登下校中の安全性をさらに高めるためには、防犯ベルやキッズケータイ等の防犯グッズも便利です。
まず、咄嗟の場合に幼い子どもが大声を出すのはなかなか難しいので、防犯ベルの役割は重要です。
しかし、防犯ベル課題もあり、ふざけて遊びで鳴らしたり、使わなさすぎて電池が切れていることに気付かなかったりする場合もあるので、防犯ベルの正しい使い方を親子でしっかり話し合っておきましょう。
また、学校によっては、門を出入りした時刻を親のケータイにメールで教えてくれるサービスを導入しているところもあるのでぜひ利用しましょう。
そして、登下校はもちろん、放課後の過ごし方もフォローできる便利なアイテムがキッズケータイです。
小さくて首からかけて持ち運びしやすく、親は子どもの現在位置を知ることもができるため安心です。
費用は掛かりますが、安全のためには導入も検討した方がよいでしょう。
ただし、小学校によっては学校への持ち込みが禁止されている場合があるので注意してください。
小学校生活の落とし穴!?帰宅時刻が意外と早い!
また、1年生のうちはほとんどの日が4、5時間目で終了するため帰宅時刻が思いのほか早いことに苦労する保護者も少なくありません。
共働きの夫婦であれば、放課後児童クラブ(以下、学童保育)を利用することでその危機を乗り越えようとしますが、平成27年度の場合、新しい1~3年生のうち9465人が利用登録できませんでした。
また、学童保育を利用できたとしても、その終了時刻が、保育所よりも早いところもざらにあるのです。
そこで、意外と早い帰宅時刻の壁について、現状と対処法を解説していきます。
学童保育は保育園より不便!?
日本保育協会が行った調査によると、保育所においては延長保育を19時まで行っている施設は、全体の90%に達しています。
一方、厚生労働省の「放課後児童健全育成事業の実施状況」によると、18時半以降も開所している学童保育は、全体の約55%しかありません。
子どもが小学校に入学したことで、企業によっては時短勤務ができなくなるところもあるため、その時間さによって親よりも子が先に帰宅するパターンが増えてしまいます。
さらに大変なのは、夏休み中です。
ほとんどの学童保育は一応夏休み中も開所していますが、給食がないため毎日のお弁当作りが負担になる上に、大量に出される夏休みの宿題のフォローもしなくてはなりません。
夏は日が長いので、遅くまで外で遊んでいる子もおり、1年生の夏休みの過ごし方は親子にとって大きな課題になりそうです。
大切な自宅の鍵、管理を徹底させよう!
どうしても子どもの方が先に帰宅することが避けられない場合、1年生になりたての子にも自宅の鍵を預けることになります。
私が教諭時代に見られた事例では、1年生に限らず、帰宅中に鍵を触っていて紛失してしまった例や、遊んでいて体育館の壁と床の隙間に鍵が入り込み取り出せなくなった例がありました。
大切な自宅の鍵を失くしてしまうと、防犯上鍵の交換も検討せざるを得ません。
そうならないために、以下のような鍵の扱いに関するルール(例)を親子で話し合い、共有しておくことが大切です。
- 鍵を落とした時に気づけるように鈴のような音の鳴る物をつける
- 鍵を落としにくいように、首から下げられる紐をつける
- 鍵は常にランドセルの決まったポケットに入れる
- 登下校中には鍵を出し入れしない
- 鍵を開け閉めした後はすぐ所定の位置に戻すなど
留守番中のルールを決めて、練習しておこう!
ついこの前まで保育園児だった我が子が、子どもだけでお留守番をするという状況は、保護者としては心配になるものです。
そこで、鍵の管理と同様に「留守番中のルール」を入学までに決めておき、春休み中に練習しておけば、少しは安心できるかもしれません。
留守番中のルールは家庭にもよりますが、例えば以下のような例が挙げられます。
- 親が不在の場合は、お友達の家に行ってはいけない
- 親が知らないお友達の家に行ってはいけない
- お友達の家に遊びに行く場合は、小学校(あるいは学童保育)から一旦帰宅し、ランドセルを置いてから出かける
- 帰宅後は宿題が終わるまでは、遊んだり出かけたりしてはいけない
- 親が不在の場合は自宅にお友達を招いてはいけない
- お友達と遊ぶ場合は、お友達の家ではなく小学校の行程や公園など外で遊ぶ
- 出かける場合は、行先を書いたメモを残しておく
- 門限(帰宅時刻)を決めておく
- お友達の家の門限が遅くても、自分の家の門限を守る
- 留守番中はインターホンに出ない
- 留守番中は自宅の固定電話に出るかどうかを決めておく
- キッズケータイ等に親から連絡があった場合は必ず出る、出られなくても必ず折り返し電話を掛ける
- ガスコンロなどの火の元には触らない
- 包丁を触ったり窓やベランダから乗り出したりなど、危険なことはしない
留守番が心配であれば習い事も考えよう
ルールを決めていたとしても、全てを守るのはなかなか難しいものです。
そこで、自宅で留守番をさせることが心配であれば、習い事に通わせるのも一つの方法です。
習い事が終わる時刻までに退社できれば、親が習い事先にお迎えに行くこともできます。
もし送迎が間に合わなくても、ファミリーサポートサービスが普及している自治体があれば、有料にはなりますが送迎を依頼することは可能です。
あるいは、民間の学童保育の中には、小学校から学童保育、学童保育から自宅までの送迎付きのところや、保育プログラムの中にピアノや英語など習い事要素を含んでいる施設もあります。
ただし、こうした習い事代やファミサポ利用代、高額な民間学童保育代等は、家庭への経済的負担が大きくなるという点においては、「小1の壁」とも言えるでしょう。
1年生は、親から自立する最初の第一歩!
登下校時や留守番の問題の他にも、一見わかりにくい“小1の壁”は存在します。
冒頭では、「自立のための一歩」という言葉を使いましたが、それは例えば、園時代より多い持ち物の管理や毎日の宿題を忘れずクリアしていくことがそうです。
ここでは、持物の管理方法や宿題の乗り切り方について紹介します。
持ち物の準備は最初が肝心!
小学校では、筆記用具を始め、教科書やノート、体操服や給食エプロン、その他の教具など、園時代と比べて持ち物が格段に増えます。
時間割は曜日によって違うし、入学したての1年生はまだ少し頼りなく、明日の持ち物を把握できていない子もいるため、親のフォローは必須です。
最初の1ヶ月くらいは、親が子どもの横について明日の持ち物を一緒に確認し、ランドセルに入れるところまでを手伝ってあげましょう。
ただし、手伝うといっても、親が全部やってあげては意味がありません。
もたもたする様子を見かねて親が手を出しすぎると、いつまでも子ども自身が一人でできるようにならないからです。
必ず子ども自身の手で準備させるように声を掛け、できたら褒めてあげましょう。
親が側についていなくても準備ができているようであれば、徐々にフォローを減らしてもかまいません。
こうした、前日のうちに明日の持ち物を準備する習慣は、今後長く続く学生生活の基礎になり、大人になってからも役に立つので、初めに徹底して習慣づけることが大切です。
名前のない持ち物は紛失しやすい!?
園時代であれば、持ち物を失くした場合は保護者全体に連絡があり、各家庭での捜索を依頼するなどの丁寧な対応があったかもしれませんが、小学校ではそうはいきません。
先ほど述べた通り、小学校では一人ひとりの持ち物が多いため、紛失事例の度に担任の先生が一つひとつ対応している余裕がないのです。
そのため、なくし物をした場合はまず教室の隅や職員室前などに設置された落とし物置き場を自分で確認し、どうしても見つからない場合のみ先生に相談するようにしましょう。
持ち物の紛失を防止するためには、教科書やノートはもちろん、鉛筆から算数のおはじき1つひとつに至るまで必ず名前を書いておき、誰のものかわかるようにしておくことが大切です。
入学当初は、子どもはまだ字が書けないので親が書いてあげなくてはいけませんが、字が書けるようになれば新しいノートやドリルの使い始めには子供自身に名前を書かせましょう。
宿題は親子で力を合わせて取り組もう!
小学校では、園時代にはなかった「宿題」があります。
帰宅時刻が遅くなりがちな共働き家庭では、宿題をする時間を確保するだけでも大変ですが、1年生のうちに宿題は自分でする習慣を定着させることはが大切です。
「宿題」は、家庭学習の基本であり、今後長く続く学生生活の土台になります。
しかし、口うるさく「宿題をやりなさい!」と声を掛けるだけでは、子どもはなかなか動いてくれませんし、側にぴったり張りついて教える時間もなかなかありません。
そこで、解決策の一つとして、100円均一のホワイトボードを利用した「やることリスト(以下図)」を作ることをオススメします。
その際、子どもだけではなく親がすべきことも表示しておくのがポイントです。
そうすることで、大変なのは自分だけではなく、親も家族のために頑張っていることを目で見て気づくことができます。
みんなでがんばろう!(タイトル例) | |||||
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○○くんのやること | おとうさん・おかあさんのやること | ||||
まだ | できた | まだ | できた | ||
てあらいうがい | ★ | てあらいうがい | ★ | ||
きがえる | ★ | おふろあらい | ★ | ||
しゅくだいをする | ★ | せんたくとりこみ | ★ | ||
ほんをよむ | ★ | ばんごはんのしたく | ★ | ||
あしたのじゅんび | ★ | しゅくだいチェック | ★ |
★は磁石で、でき次第、「まだ」欄から「できた」欄へ移動させます。
票の線は、ホワイトボードにマスキングテープを張れば自由に編集可能です。
こどもが二人以上いる場合はこども欄を二つ設けて縦に並べたり、父親と母親でやることを分担したりして、工夫しましょう。
毎日忙しいですが、晩御飯を作る横で音読を聞いたり、寝る直前に宿題の見直しをしたりして宿題の時間を確保しましょう。
その際、「頑張ったね!」「大きな声でハキハキと読めたね」「こんなこと習ってるんだね、面白いね」といった親の前向きなコメントは、子どものやる気をアップさせることにつながります。
親子でルールを話し合い、小1の壁を乗り越えよう!
今回、登下校時や放課後の過ごし方、身の回りの物の管理など、小学校に上がってもまだまだ子どもには手が掛かるということがよくわかったと思います。
しかし、入学当初からこれらの“小1の壁”について把握し、親子でしっかり話し合い、ルールを決めておくと、小学校生活を楽しく、スムーズにスタートすることができるでしょう。