女性の社会進出や多様な働き方、ビジネスの国際化などにより、夫婦別姓を希望する人が増えています。
現状の法規制を基に、今の段階で夫婦別姓にするメリットとデメリットを考えてみました。
結婚したら夫婦のどちらかが名字を変えなくてはいけない!?
日本の民法においては、入籍すると、夫か妻のどちらかが片方の名字に合わせなくてはなりません。
しかし、民法上の問題なので、役所に婚姻届を出さず、「事実上の夫婦(事実婚)」という形をとれば、現在でも夫婦別姓でいることは可能です。
婚姻届を提出しても、夫婦別姓でいられるよう、法改正するといった話も進められているようですが、現時点での夫婦別姓をすることのメリットとデメリットを解説していきます。
結婚に際して夫婦別姓を検討しているようなら、ぜひ参考になさってください。
夫婦別姓にはどのようなメリットがある?
手続きする手間が省けて変更手続きが不要に
役所に婚姻届を提出する必要がなく、役所まで行く手間を省くことができます。
婚姻届を提出すれば、戸籍上の名字も変わってしまうため、身分証明書や銀行口座など、生活周りに登録されている名字は全て変更しなければなりません。
名義変更の手続きは意外と大変な手間になりますが、婚姻届を提出しない事実婚であれば、戸籍上の名字は変わらないので名前の変更手続きをする必要がないのです。
名字が変わらないことで個性を大切にできる
名字だけでも名前が変わるというのは、大きく印象が変わるものです。
これまでの人生で慣れ親しんできた名字は、その人の印象を変えるため、大切な個性になっている場合もあるでしょう。
自分自身の名字が気に入っていたなら、友達・知り合いから呼ばれ方が変わるのに抵抗があるかもしれません。
また、結婚後も元の名字で仕事をしたいとなると、婚姻届けを出した場合、公的書類やパスポートは新姓で、名刺や取引先とのやりとりは旧姓とややこしくなってしまいます。
特にグローバルな仕事をしていると、先方にわざわざ説明をしなければならず、仕事をしにくいという印象を与えかねません。
自分自身のルーツを守ることができる
もし名字が変わるほうが一人っ子だった場合、自分自身のルーツの象徴である名字が変わることで途絶えてしまいます。
兄弟・姉妹がおらず、先祖代々に渡って続いてきた名字が結婚することで途絶えてしまう場合もあるのです。
自分自身のルーツである先祖は大切な存在だと考えた場合、それを名字という形で後世に残せなくなってしまうのは辛いことでしょう。
逆に夫婦別姓にはどのようなデメリットが?
名字が変わることを避けるため、事実婚を選択する夫婦も現実にいます。
しかし、その場合、どのようなデメリットを抱えることになるのでしょうか。
戸籍上で夫婦にならないことで、発生するデメリットについて、4つのポイントを紹介していきます。
納税額が増える可能性がある
基本的には、結婚をすると配偶者控除を受けられます。
配偶者控除とは、配偶者の収入が少ない場合、所得税・住民税といった税金の負担が軽減されるという制度です。
事実婚のケースでは、配偶者控除の対象にならないため、入籍をした夫婦より税金の負担が増えてしまいます。
お互いに夫婦が仕事をしているうちは気にならないかもしれませんが、出産に伴い、専業主婦・専業主夫になるという選択肢をとりづらくなることを理解しておきましょう。
財産を相続するには遺言書が必須になる
入籍をした夫婦だと、相手が亡くなったときに財産の相続を受けることができます。
しかし、入籍をしていないと法的に相続権が発生しないため、そのままでは財産を相続することができません。
もしパートナーが亡くなった時に財産を相続するには、生前に遺言書を作っておく必要があります。
そして、どれだけの財産をどのように相続するのかを決めておくことも大切です。
子供が生まれたら認知届を提出しなければならない
事実婚で子供が生まれても、父親と戸籍上の繋がりはないことから「認知届」を提出しなければなりません。
父親が認知をしていないと、亡くなったときに子供に財産の相続させられないのです。
民法上においても、父親が認知をしていれば、婚姻届を提出している夫婦と同じように、父親から子供に財産を相続させることができます。
手術などの同意書にサインができない
本人の重要な権利に関する決定について、日本の法律では「法律上の親族」でないと認められないとされています。
たとえば、パートナーが手術を行う事になり同意書や入院の申込書にサインをしたいという場合でも、基本的に事実婚は他人とみなされてしまうため、拒否されてしまうことがあるのです。
万が一、緊急手術などが必要となった際、たとえ自分が傍にいたとしても同意は認められず、他の親族の同意が得られるまで手術が行えないなどのトラブルが起こってしまうリスクがあるということです。
自分たちの考えをよく話し合い、最適な選択を!
入籍をせずに夫婦別姓を選ぶと、婚姻や名前変更といった手続きをせずに済みます。
名字を変えずに済み、夫婦それぞれの個性も守られることでしょう。
しかし、税制面での恩恵を受けられなくなり、財産分与の面では手続きが複雑になってしまいます。
名字とはいえ、名前は自分自身を表わす大切なものなので、夫婦でしっかり話し合って、自分たちに最適な選択をするようになさってください。