平成27年度の文部科学省統計によると、全国の小学校2万601校のうち、公立は2万491校(分校含む)、私立は227校、国立は72校ありますが、それぞれどのような特徴があるのでしょう。
今回は、それぞれの学校の主な特徴や必要な費用など、お受験準備の前に身につけたい基礎知識についてまとめました。
それぞれの小学校の主な特徴、メリットやデメリットを紹介!
まずは、公立、私立、国立小学校それぞれの主な特徴について以下の表にまとめました。
やはり顕著なのは、私立小学校の経済的な負担の大きさでしょうか。
また、入学試験の有無によって子どもの様子や校風にも違いが出るようです。
公立小学校 | 私立小学校 | 国立小学校 | |
---|---|---|---|
授業料 | 無料 | 年間約46万円 | 無料 |
入学試験 | なし | あり(両親・家庭も査定) | あり(抽選もある) |
試験倍率 | 0倍 | 2~10倍 | 3~60倍 |
入学金 | なし | 30万円前後 | 10万円前後 |
校風 | 学校ごとの差が小さい | 独自の教育理念、充実した教育プログラム | |
担任 | 学級担任制 | 学級担任制だけでなく教科担任制もある | |
通学距離 | 学区制(徒歩圏内) | なし(通学距離制限を設けている学校も) | |
子どもの様子 | 同級生の家が近い。 いろんなタイプの子がいる。 | 同級生の家が広範囲に散らばり離れている。 経済的に余裕があり、伝統の校風に合う子が集まりやすい。 |
公立小学校はリーズナブルで色んなタイプの子どもがいる
ほとんどの子どもは学区内にある公立小学校に進学するのが普通なので、公立小学校においては入学試験や入学金はありません。
義務教育のため、授業料が無料なのはもちろんですが、その他の学習費用も私立に比べれば安く済むので、家計には優しいです。
入試などはなくすべての子どもを受け入れるため、色々なタイプの子どもと触れ合うことができます。
また、学区制のため地元の友達がたくさんできるメリット大きいですが、その分、校風に地域性が出る場合もあります。
例えば、外国人の多く住む地域であれば、児童の5人に1人が外国籍という公立小学校も存在します。
公立の小学校でも子どもたちの学力の向上については常に研究されていますが、教室内の学力格差がなかなか埋まらず、学力の底上げに力が入りがちです。
さらに、学級担任制であることから、一人の教諭が教科指導と生活指導の両面から子どもを多角的に見る事ができる反面、教諭の裁量によっては指導力に差が出ることが否めません。
独自の校風で高い教育プログラムを実施する私立小学校
私立小学校の最大の特徴は、試験によって選び抜かれた同級生と共に高度な教育プラグラムを受けられる点でしょう。
ただし、公立とは違う独自の教育理念を持ち、特色ある授業を実践するためそれ相応の高額な授業料を徴収されます。
授業料はかなり高額ですが、その分教科担任制やネイティブスピーカーによる英語教育など、より専門的で密度の濃い教育を受けることができます。
校風は学校によって異なりますが、学校ごとの特色が顕著な分、子どもによっては合うか合わないかははっきり分かれます。
受験を決めるまでに小学校よく見学し、子どもの性格も踏まえて受験するかどうか見極める必要があります。
ただし、授業料の他に寄付金や修学旅行の積立金など全ての学習費用を含めると公立の約4.7倍にもなるため、経済的に余裕のある家庭でないと6年間通わせるのは厳しいのが現実です。
大学とも連携、独自の授業を展開する国立小学校!
国立小学校は、経済面では私立小学校よりリーズナブルでなおかつ特色ある授業が受けられるため、学校によっては受験倍率が数十倍になるところもあります。
国立大学の附属小として、教育学部の「教育研究校」という位置づけがあるため、教育系学部教授による研究授業が行われたり、調べ学習や体験学習、討論に何時間も割いたりなど独特の授業風景に惹かれて受験する人も多いようです。
自主性を重んじる校風ゆえに、積極的な性格の子は活躍の場を見つけやすく楽しく過ごせますが、中学や高校受験を見据えると通塾は欠かせないという意見も耳にします。
また、公平を期すため、ペーパー試験や面接とは別に「抽選」が選抜方法として用いられていることも多く、入学できるか否かは運も身につけなくてはいけません。
中には、ペーパー試験で合格した後に抽選で落選するパターンもあるので、親子で大きな精神的ダメージを受ける覚悟も必要になってきます。
また、子どもに自主性を求める校風ゆえに、保護者にも行事ごとの運営を任せたり、保護者に行事への参加を義務づけたりなど、保護者の出番が多いようです。
共働きの家庭にとっては子どもの学校行事への参加がなかなか難しいという人いるかもしれませんが、子どもの学校での様子やクラスの様子を直接見る事ができる良いチャンスだと思って、前向きに捉えたいところです。
小学校入学までにかかる費用と、入学後の学習費用総額を学校ごとに比較!
誰でも入れる地元の公立小学校と、「お受験」が必要な私立・国立小学校とでは、既に入学前にかかる費用から差があります。
また、入学後に必要な学習費の総額についても学校ごとに比較しました。
私立・国立は多額の塾代や入学金が必須!?
まず、勉強面の費用の準備について見てみましょう。
公立小学校の入学準備としては、保護者が自宅でできる範囲でひらがなや数字の読み書きを教え、「自分の名前を読めて書けるようにしておく」程度で十分なので、さほど費用はかかりません。
もちろん、入学金も必要ありません。
一方、私立・国立小学校では「入学試験に合格する」という大きい目的があるため、幼児向けの学習塾に通う費用やドリル代、模擬試験代が必要になります。
それらに加え、面接に使用する洋服や小物代まで含めると約50万円は用意しておくと良いでしょう。
入学金は学校にもよりますが、国立小学校は10万円前後、私立小学校は30万円前後が平均的です。
入学後にかかる学習費総額、公立と私立を徹底比較!
小学校入学後、金銭面の差はさらに開いていきます。
公立小学校は義務教育ですから、「入学金」や「授業料」は無料ですが、他にドリルなどの学用品やソーラーカーのような実習材料費、修学旅行や遠足の費用などは別途必要なので、公立の小学校もある程度の学費はかかります。
しかし、純粋に「授業料」だけで比較すれば、国公立は無料、私立小学校は年間平均約46万円とその差は大きいです。
また、国立・私立小学校にはいわゆる「寄付金」と呼ばれる学校納付金存在するため、国立なら年間10万円より徴収され、私立なら20万円程は「授業料」に上乗せされます。
最終的に、学校給食費や学校外活動費(芸術文化活動・スポーツなど)など全ての項目を含めて「年間学習費」を比較すると、私立小学校が152万円に対し公立の小学校は約32万円と、約4.7倍の差があるのです。
項目 | 公立小学校 | 私立小学校 | |
---|---|---|---|
学校教育費 | 授業料 | 0円 | 461,194円 |
学校納付金 | 10,135円 | 226,022円 | |
通学関係費 | 17,574円 | 89,317円 | |
図書・学用品・実習材料費等 | 19,049円 | 30,923円 | |
修学旅行・遠足・社会見学費等 | 6,738円 | 41,797円 | |
その他 | 6,547円 | 21,155円 | |
学校給食費 | 44,441円 | 44,807円 | |
学校外活動費 | 217,826円 | 613,022円 | |
年間合計 | 322,310円 | 1,528,237円 |
参照:厚生労働省「平成28年度子供の学習費調査」
入学までの準備や流れを学校の種類ごとに紹介!
これまでにも述べた通り、公立小学校と私立・国立小学校とでは入学試験の有無という大きな違いがありますが、それぞれどのような流れで入学に至るのでしょう。
入学までのおおまかな流れと注意点についてまとめました。
公立小学校の入学までの準備や流れを紹介!
年長の4、5月~:ランドセルの検討開始
家庭によっては、ランドセルのカタログを取り寄せたり展示会に行ったりして、品薄になりやすい工房系のランドセルの予約や購入を済ませているところもあります。
6月:就学相談
支援学級や通級学級を検討している子どもを対象に、就学相談が行われます。
形式は自治体にもよりますが、小学校の先生が幼稚園に子どもの様子を見学に行き、幼稚園の先生から子どもの様子を聞くなど、幼小が連携して子どもの発達を見守ります。
7~8月:ランドセルの購入
ランドセルの購入も含め、入学後に使用できるよう学習机の購入を検討する家庭も多いです。
10月:就学時健康診断
各自治体の教育委員会から就学時健康診断の通知が来るので、小学校に健康診断に行きます。
初めて小学校に足を踏み入れる子どもにとっては、小学校生活のイメージを膨らませるいい機会です。
11~12月:勉強机や学用品の購入、学童の申し込み確認
気持ちよく1年生のスタートが切れるよう、勉強スペースを決めて1日1回は机に座る習慣をつけましょう。
また、入学後に通いたい学童保育の締め切り日などは早めに確認しておきましょう。
1月:就学通知書の送付
保護者に就学校の指定や入学期日の通知が来ます。
最近は多くの市区町村で「学校選択」を導入しており、指定内で通わせたい学校の希望を出すことが可能です。
ただし、希望の学校の入学予定者数が定員を超えると抽選となり、外れてしまうと他の学校へ通うこともあります。
2月:小学校説明会
小学校生活に必要な持ち物や教材、文具などはキャラクター物NG、鉛筆は2Bのみなど細かいルールがある場合もあるのでしっかりメモを取りましょう。
3月:持ち物の名前つけ、通学路の確認、生活リズムの変更など
入学式に備え、名前つけは早めに行いましょう。
通学路を実際に親子で歩いてみて、危険な場所や交差点を確認しておくことも大切です。
また、幼稚園より早い時間帯に朝食を食べなければならないなど、生活リズムが変わる可能性があるため、入学後のペースに合わせた生活リズムを作っていきましょう。
私立・国立小学校の入学までの準備や流れを紹介!
私立・国立の小学校は、入学試験があるため、より早い段階から入学準備を始める必要があります。
年中の夏:受験の意思を固め、入塾する
国立・私立の小学校のいわゆる「お受験」では、中学・高校受験とは違い、家庭でのしつけや教養など、これまでの生育環境も含めて考査されます。
夫婦で受験の目的や志望校についてしっかり話し合い、意思統一をしておかなければ、合格までの長い道のりを乗り切ることはできないでしょう。
遅くても年中の夏頃には受験に向けて、幼児用学習塾等に通う始める子が多いようです。
6月~9月:私立学校公開、入学説明会に参加、公立小学校も検討
私立の学校公開(授業参観)に積極的に参加するのはもちろんですが、万が一残念な結果になった場合に備え、公立小学校も、地域を巻き込んだお祭りや運動会などの機会に見学しておきましょう。
年中冬:入試報告会
各塾において、次年度の受験生向けに今年の入試報告会を開催し、試験の特徴や倍率についての説明が行われます。
1~2月:日本の伝統行事に触れ合う
餅つきやお正月の遊び、節分の豆まきなど日本の伝統行事などについても入試で問われることがあるので、折々で体験させておくことが大切です。
そうした余裕がない場合は保育園や幼稚園で行った季節の行事について、子どもの話を聞いたり、絵日記にまとめたりして家庭で話題にしましょう。
年長春:先輩ママから受験スケジュールを聞く
塾や習い事などのつてを利用しながら、志望校に子どもを実際に通わせている保護者から話を聞いておくと、合格までの流れがわかりやすいです。
4~5月:説明会日程、募集要項等発表
説明会は1回きりで、説明会自体にも申し込みが必要な学校もあるので要注意です。
年長に入るまでには志望校をある程度決め、説明会がいつ行われるのか確認しておきましょう。
7~8月:夏期講習を受講、旅行や体験学習も
経済的、時間的に塾に通わせるのが難しい場合は、年長の夏だけ集中的に夏期講習を受けさせるのも一つの方法です。
また、面接では「夏休みの思い出」を聞かれる場合もあり、子どもに実体験を身につけさせるためにも、夏休みを利用して海や山などの自然に触れ合い、博物館や水族館、動物園等へ出かける機会を持ちましょう。
7~8月:模擬テストを受ける、洋服・小物の購入
学校別模擬テストや大規模な統一模試などを受け始める時期です。
また、入試当日に使用するスーツや靴、鞄など、入試に必要な物品は親子共に早めに揃えておきましょう。
8~9月:願書の内容検討、配布開始
願書に記入する内容を練り始めましょう。
願書が配布され始めたら書き損じに備えて2~3部は入手し、コピーをとって下書きをします。
特に、願書に貼る写真については必要なサイズが決まっているので、早めに写真館を予約し準備しましょう。
9月:面接練習
お受験では、親子面接・親のみの面接・子のみの面接、いずれかのパターンで面接がある学校がほとんどです。
過去問題をよく研究し、受け答えの練習を親子共にしておきます。
模試の中には「模擬面接」まで実施してくれる模試もあるので、積極的に利用しましょう。
10月中旬~11月下旬:私立小学校の入試
11月下旬~12月上旬:国立小学校の入試
なお、関西の国立小学校は翌年の1月下旬~2月上旬がピークになります。
国立小学校の場合は入試後にも抽選が行われる場合があり、落選するとかなりのダメージを受けるので、事前に心づもりをしておきましょう。
12月:合格発表、入学手続き
合格発表後は、必要書類を提出し、入学金やその他の寄付金などを納入すれば入学手続きは完了です。
ただし、各自治体に公立小学校へ通わないことを伝えるため、合格した学校から交付される「入学承諾書(または入学許可証明書)」を教育委員会へ提出しましょう。
こちらも提出期限が自治体によって決められているのでホームページ等で確認しておきます。
お財布とも相談しながら、子どもの性格に合わせて進学先を見極めよう!
以上のように公立、私立、国立小学校ではそれぞれ異なる特徴があることがわかりました。
お受験する場合は、かなり早い段階から勉強面でも生活面でも周到な準備が必要です。
のびのびおおらかに色んなタイプの仲間と触れ合いながら学び合いたい場合は国公立、独自の伝統を重んじる校風で経済感覚が近い落ち着いた仲間と豊かな学習経験を積みたい場合は私立を選ぶなど、子どものタイプに合った進学先を親子でよく考えてみましょう。