保育園や幼稚園から小学校へ上がるとき、子どもたちの生活にはどのような変化があるでしょうか。
今回は、主に小学一年生の学校生活の具体的な中身について触れながら、入学までに準備しておきたい生活リズムや習慣などを紹介します。
小学校に入学すると、「お勉強」が始まります!
幼稚園や保育園(以下、園とする)と小学校の大きな違いえば、机に向かってのお勉強があるかどうかです。
もちろん、園でも机に向かっての活動はありますが、園ではひらがなの読み書きや計算を習う義務はないので、机での作業は工作や絵画、お弁当や給食を食べることが主になります。
では、小学一年生がどんな勉強をするのか、具体的な目標や学習内容を見てみましょう。
一年生のお勉強、教科別の目標と主な学習内容を紹介!
教科 | 目標 | 学習内容 |
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国語 |
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算数 |
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生活 | 身近な人々や社会、自然とのかかわりに関心を持ち、自分自身や生活について考え、生活に必要な習慣や技能を身につける ※3年生以降は理科、社会、総合的な学習の時間になります |
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体育 |
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図画工作 |
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音楽 |
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道徳 | 学校の教育全体を通して道徳的な心情、判断力、実践意欲・態度などを養う |
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特別活動 | 望ましい集団活動を通して、集団の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうとする態度を育て、自分の事について考え、よさを伸ばす能力を養う |
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この表を見ると、一年生といえども盛りだくさんの学習内容であることがわかります。
もちろん、これらすべての学習を机に座ってするわけではありませんが、メインの科目である国語と算数は机での学習が基本です。
しかも、授業は1コマにつき45分たっぷりありますし、授業中にフラフラ立ち歩いたり、自由にトイレに行ったりすることも許されません。
園児のうちは長時間机に向かって作業をするような場面は少ないので、入学までにできる工夫として家庭では1日1回は机に座って作業をする習慣をつけておくとよいでしょう。
作業内容は、折り紙や工作、すごろくなどでもかまいません。
ある程度机に向かっての作業に慣れていれば、一年生になって始まるお勉強にもスムーズに入りやすくなるでしょう。
一年生の時間割(例)を紹介!
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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1 | 特別活動 | 国語 | 国語 | 算数 | 算数 |
2 | 国語 | 算数 | 体育 | 道徳 | 音楽 |
3 | 生活 | 図工 | 算数 | 体育 | 国語 |
4 | 体育 | 図工 | 音楽 | 国語 | 生活 |
- | 給食 | ||||
5 | 国語 | 国語 | - | 国語 | 国語 |
6 | - | - | - | 生活 | - |
これはあくまでも一例なので、各教科の順番や6時間目がある曜日は、同じ一年生でも学校ごとに異なります。
しかし、各教科の授業数については、全国で統一されており学校によって算数の授業が多かったり少なかったりすることはありません。
よく見ると算数よりも国語がずいぶん多いように感じられるかと思いますが、これは図書の時間や書写の時間を含むためです。
基本的にはこの時間割をもとにして毎日の学校生活を送っていくわけですが、学校行事や学習状況に応じて変更されることもあります。
そのため、一年生のうちから、先生の話をよく聞き、翌日の時間割や宿題、持ち物を連絡帳にメモをとることが求められます。
最初のうちはひらがなも習っていないので連絡事項は先生がプリントで教えてくれますが、学習が進むと共にそれもなくなっていきます。
一年生の一日をのぞいてみよう!
一年生の時間割を確認したところで、一日の流れをより詳しく見てみましょう。
一年生の一日は、主に45分の授業時間と休み時間の組み合わせでできています。
授業時間と休み時間の切り替え時にはチャイムが鳴る小学校が多いですが、中にはチャイムはなしで時計だけを見て時間割通りに行動することを求められる小学校もあるようです。
いずれにせよ、時計を見ながら時間に遅れないように行動することが求められるため、「時計を見て時刻が読めること」は一年生にとって大切な課題になります。
一年生の1日の流れ
時間 | 内容 | 解説 |
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7:45~8:00 | 登校 | 徒歩通学が基本だが、一豪雪地域や越境して遠方の小学校に通う家庭では、自家用車やバスを利用することもある。 集団登校か自由登校かは小学校によって異なる。 |
8:00~8:30 | 朝休み | 友達と遊ぶために、8時過ぎには到着している子もいる。 提出物があれば教卓に提出し、ランドセルはロッカーへ。 1時間目が体育であれば、朝休みの間に着替えておく。 |
8:30~8:45 | 朝の会 | 出席確認や健康チェックをする。 週に1回程度、全校集会(朝礼)がある。 「朝の学習タイム」としてプリント学習や読書を習慣づけている小学校もある。 |
8:45~9:30 | 1時間目 | 1コマ45分は全国共通。 |
9:30~9:40 | 休み時間 | 学校によっては1,2時間目の間の休みが5分の場合もある。 なお、休憩中にトイレや次の授業の準備を済ませておくことが基本だが、クラスによって指導の徹底度には差がある。 |
9:40~10:25 | 2時間目 | 1コマ45分は全国共通。 |
10:25~10:45 | 中休み | 午前中でいちばん長い休みのため、外に出て遊ぶ子も多い。 |
10:45~11:30 | 3時間目 | 保育園や幼稚園なら11時半頃には昼食の準備が始まるが、小学校ではさらにもう1時間授業がある。 |
11:30~11:40 | 休み時間 | 1,2時間目の間の休み時間と同様に、3,4時間目の間の休みが5分しかない小学校もある。 |
11:40~12:25 | 4時間目 | お腹がすいてくる時間なので、集中力が欠けやすい。 園の昼食はもっと早いので、春休み中に昼食時刻を少し遅らせて、慣らしておく必要がある。 一年生の最初は4時間目を早めに切り上げて給食準備にあてることもある。 |
12:25~13:15 | 給食 | 給食当番はエプロンをつけて配膳をする。 最初のうちは、6年生が給食準備の手伝いに来てくれる。 配膳に時間がかかってしまった場合、「いただきます」から「ごちそうさま」までの間が20分しかないこともある。 その他、給食の細かいルールは学校やクラスごとに異なる。 |
13:15~13:35 | 昼休み | 「ごちそうさま」をした後、昼休み後の掃除に備えて机と椅子は教室の後方へ下げておく。 また、連絡帳を書く時間にあてられる場合もある。 例えば、給食を食べ終わった児童から、黒板の連絡事項を連絡帳に書き写し、教卓に提出してから遊びに行くなど。 |
13:35~13:50 | 掃除 | グループに分かれて教室や廊下、靴箱などを掃除する。 掃除場所の交代時期など、細かいルールはクラスによって異なる。 |
13:50~14:35 | 5時間目 | 睡眠不足の場合、うとうとして寝てしまう一年生もいる。 |
14:35~14:45 | 休み時間 | クラスによっては6時間目に備えてこの休み時間に外に出て遊ぶことを禁止している場合もある。 |
14:45~15:30 | 6時間目 | 一年生は週に1回だけ6時間目があるが、6年生ともなれば、ほぼ毎日6時間目の授業がある。 |
15:30~15:45 | 終わりの会 (帰りの会) | 今日一日を振り返り、良かったことやがんばったことを話し合ったり、明日の行事や持ち物、宿題を確認したりする。 |
15:45~ | 下校 | 防犯のためできるだけ2人以上で下校すること。 学校によって集団下校が指定されている場合もある。 |
学校によって集団下校が指定されている場合もある。
上記はあくまでも一例であり、時刻については自治体や小学校によって異なります。
また、授業内容は全国共通ではありますが、休み時間の過ごし方や給食、掃除時間等の細かいルールは学校ごとやクラスごとによっても担任の裁量次第で変化するのが現状です。
極端ですが、教室が綺麗に保たれているかゴミがたくさん落ちているかどうかだけでも、クラス運営がうまくいっているかどうかが見えてきます。
また、指導力のある先生のクラスでは、3時間目のチャイムが鳴ると同時に日直の「起立!」という号令がかかりますが、そうでない場合は、授業が始まってもバタバタとお茶を飲んでいたり、教科書が机に出ていなかったりという風な差が見られます。
小学校入学までに身に付けるべき生活習慣とは?
このように、多忙で分刻みの一年生の生活を無事に乗り越えていくためには、入学前にどのような準備をすれば良いでしょうか。
入学するまでに保護者が子どもにできるサポート方法を紹介します。
規則正しい生活リズムをつくろう
これまでの例を見てもわかる通り、小学生になるとチャイムに合わせた行動が求められます。
また、一年生でも水曜日以外は5時間目の授業があるため、帰宅時刻が遅くなりがちな上、毎日の宿題や習い事、習い事の課題等をこなさなくてはならず、入学後しばらくは子どもも疲れやすいことが予想されます。
こうした毎日の課題をクリアしていくためには、規則正しい生活を送ることが大前提です。
そこで、保護者ができるサポートとしてはまず、お子さんの体調に気を付けながら朝夕の食事時間や就寝時間をできるだけ一定にすることから始めましょう。
夕食の時間が子どもに合った時間に固定されれば、就寝時間も早くなります。
睡眠を十分にとることで免疫力が高まり風邪を引きにくくなりますし、朝いちばんのお勉強や午後からの授業にも集中できるようになるので、一石二鳥です。
小学生一年生であれば、朝は7時起床、夜は9時就寝が目安です。
睡眠を妨げやすいテレビやゲームは保護者がしっかりと管理し、夜更かしがエスカレートすることのないよう、親子で話し合い合ってテレビやゲームのルールを決めましょう。
自分のことは自分でする習慣をつけよう!
園では、担任の先生と園児との距離感が近く、着替えや工作などの課題に園児がつまずいた場合でも、先生が丁寧に手伝ってくれたかもしれません。
しかし、小学校では担任の先生は忙しくなかなか児童一人ひとりに手が回らないこともあるため、一年生であっても自分のことは自分ですることが求められます。
学校でするべき「自分のこと」というのは、お勉強をのぞくと、例えば次の授業の準備や連絡帳の書き写し、体操服の着替えや脱いだ服を畳むこと、給食エプロンを着てリボンを結ぶことなど様々です。
こうした細々としたことが自分できるかどうかは、家庭での生活経験が豊かさにかかっています。
例えば、家事の中で洗濯物を畳んだり食事の配膳をしたりなど、子どもでもできるお手伝いをさせることで「自分でできる事」を増やしていくことが効果的です。
また、着替えや明日の持ち物の用意などをできるだけ自分でさせることも大切です。
ただし、どうしても一人ではできないことを無理にさせる必要はありません。
つまずいている箇所をピンポイントで把握し、どうしてもできない部分は親が一緒に手伝ってあげることでクリアし、まずは「自分でできた!」という気持ちを育ててあげるようにしましょう。
先生やお友達とよく話し、相手の話をよく聞こう
小学校の授業では、手を上げて自分の意見を述べたり、お友達の意見に対して賛成か反対かを述べたりするなど、「話す力」と「聞く力」が求められます。
一年生の学習内容の中でも、「順序を考えながら話したり聞いたりすること」が、一つのポイントとなっています。
うまく話せない時や話すのが苦手な子がいれば、授業中であれば先生にフォローしてもらえますが、休み時間や掃除中など先生の目が届かない所では自分でお友達とやりとりしなければなりません。
こうした「話す力」や「聞く力を育てるためには、周囲の大人が子どもの話を聞いてあげることが大切です。
親が、子どもの話をさえぎらずに「そうだね」「わかるよ」と相槌をつきながら、最後まで聞いてあげることで、子どもは自分の話を聞いてもらえる喜びを覚え、安心して話すことができるようになります。
子どもは、自分の話を聞いてもらえた経験を繰り返していくことで、人の話にも耳を傾けられるようになることでしょう。
絵本に親しもう!
小学校では、国語の時間にどんどん新しい文字を習い、物語や説明文など長い文章を読む機会が増えていきます。
こうした長文に慣れて行くためには、園児のうちに絵本の読み聞かせをたっぷりしてあげることが大切です。
なかなか絵本を読んであげる時間がない場合は、テレビの時間を減らして絵本タイムあてたり、子どもがいつでも好きなときに絵本を手に取って読めるように本棚を整備したりするなど、ある程度親の管理も必要です。
また、寝る前に1冊だけでも良いので、ゆったりとした時間の中で親子が一緒に本を読み、絵本の内容について話し、共感し合うことも子どもの心に残ります。
遊びの中からたくさん学ぶことがあります!
子どもたちは、友だちと遊ぶ中でたくさんのことを学んでいきます。
友だちと遊ぶのはもちろん楽しいことですが、ときには意見がぶつかって喧嘩になることもあります。
しかし、トラブルをきっかけにお互いの気持ちを話し合うことで、普段から相手の気持ちを考えられるようになったり、ルールをきちんと守れるようになったりと、子どもの心が成長するのです。
また、入学までに自然の中でたくさん遊びの体験を積んでおくことも大切です。
公園などで虫取りや砂遊び、鬼ごっこなど身体全体や指先をたくさん使う遊びをすることで、好奇心や思考力、表現力が育ちます。
昆虫を家庭で飼育したり、家庭でペットを飼ったりすることも、命の大切さを学ぶ貴重な機会です。
時計の読み方を学んでおこう
最後に、小学校の分刻みの生活に馴染むためには、ある程度は時計が読めないと厳しいかもしれません。
最初のうちは先生が「長い針が8になったら教室に戻りましょう」などと教えてくれますが、徐々に自分で時計を見て行動することが求められるようになっていきます。
入学までに時間の感覚を身に付けるためには、家庭でも工夫が必要です。
例えば、「長いはりが10に来たら着替えよう」「オモチャを5分で片付けられるかな?ようい、ドン!」というように、日常生活の中で時計を取り入れて行動させるようにしましょう。
一年生への準備は毎日の積み重ね!
今回は、一年生の学習内容や学校生活を詳しく紹介したので、我が子がやっていけるのかと不安になってしまった方もいるかもしれません。
しかし、今回紹介した「規則正しい生活リズム」「お友達との関わり」「自然の中での遊び」「絵本の読み聞かせ」「時計を取り入れた生活」などの工夫を少しずつ生活に取り入れ、親子で経験を積み重ねることで、スムーズに一年生をスタートさせることができるでしょう。