腹痛や下痢が慢性的に続く、緊張するとお腹が緩くなる、などの悩みを持つ人は多いです。
近頃注目を集めている「低FODMAP食」を利用して自分のお腹の不調の原因を知り、改善していきましょう。
お腹の調子について悩んでいる日本人は多い
日本人で自分のお腹の不調について悩んでいる人は多く、原因や症状も様々です。
急性的な物もあれば、生活習慣・ストレス・体質が原因で腹痛や下痢を繰り返している人もいます。
慢性的にお腹の不調に悩まされている人の原因には、IBSと呼ばれる病気が関わっている能性もあります。
IBSも含め、お腹の不調は食事を変えることで改善できる可能性が十分にあるので、お腹が弱いと悩んでいる人はIBSやFODMAPについて学び、自分に合った食材を見つけていきましょう。
日本人に多い過敏性腸症候群(IBS)とは?
過敏性腸症候群(IBS)は先進国で多く見られる病気の1つで、主に食生活やストレスが原因で発症します。
病院で検査をしても病気は見つからないのにも関わらず腹痛や下痢・便秘を繰り返すのが特徴です。
日本人では10~15%がIBSと言われ、その中心は若い世代でしたが現代のストレス社会においては、中高年のIBS患者も増加しています。
常にお腹が緩い、お腹が弱いという人で下記の症状に当てはまる場合は、過敏性腸症候群である可能性が高いでしょう。
過敏性腸症候群の主な症状は?
便秘と下痢の状態が一時的なものではなく6ヶ月以上続き、直近3ヶ月のうち1ヶ月以内に3日以上便秘と下痢を繰り返している場合には、IBSの診断が下ります。
便秘や下痢以外にも、お腹の張り、腹痛、お腹がゴロゴ鳴る、ガスが頻繁に出る、などの症状が見られます。
食欲不振、頭痛、肩こり、嘔吐感などもIBSの症状に含まれるため、思い当たる人は注意が必要です。
過敏性腸症候群は3つのタイプに分かれる!それぞれの症状は?
IBSは便の形状によって3タイプに分類することができます。
また、その3タイプに当てはまらずに「その他」に分類されるIBSも存在します。
下痢型IBS
男性に多く見られるタイプで、便が非常に柔らかい「水様便」「泥状便」であることが特徴です。
慢性的に腹痛を伴う下痢が起こり、1日に何度もトイレに行くことが必要になります。
便秘型IBS
女性に多く見られるタイプで、便が「硬い便」「コロコロ便」であることが特徴です。
慢性的な腹痛や、お腹がスッキリしない感じに悩まされる人が多いです。
混合型IBS
便秘、下痢を繰り返し、どちらのタイプの症状も見られるのが特徴です。
「FODMAP」を知ってお腹の調子を改善しよう!
FODMAPとは、Fermentable(発酵性)、Oligosaccharides(オリゴ糖)、Disaccharides(二糖類)、Monosaccharides(単糖)AndPolyols(ポリオール)の頭文字をとった言葉でIBSの原因となった食材を探る食事方法のことを言います。
この5つは「短鎖炭水化物」に分類され、小腸を通過する際に腸内細菌によって分解され、水素ガスなどを発生します。
腸内でガスが溜まると、お腹のハリやおならの増加といったお腹が弱い人特有の症状を引き起こします。
さらに、FODMAPに当てはまる食材は、腸管の浸透圧を上げて腸内に水を引き寄せる働きを持っているのが特徴で、不快感や腹痛、お腹が緩い、下痢などが発生してしまいます。
つまり、FODMAPの高い食材を避け、低FODMAP食を中心に食べることによってお腹の調子を良くすることができる様になるのです。
食事療法FODMAPで過敏性腸症候群の原因を探ろう!
欧米を中心に研究・実践をされているFODMAPですが、これを日々の食事に活用することで、自分のIBSを引き起こす原因となっている食材を把握することが可能です。
FODMAPを含む食材の摂取をできるだけ制限して、その後1種類ずつFODMAP食材を追加しながら食事をしてお腹の様子を観察します。
それを繰り返している間に、症状が出るか、どの食材で発症したかを記録することによってIBSの要因が分かります。
元々この食事療法はオーストラリアの大学の研究グループが行っていたもので、今ではFODMAP療法を使ってお腹の調子の改善を試みている人は増えています。
実際に、オーストラリアの医学研究では、IBS患者に低FODMAP食を21日間(1日3食)摂取してもらったところ、下痢型IBSも便秘型IBSもお腹の症状が改善し、さらに便の状態も良くなったという報告が出ており、医療でも用いられている科学的根拠に基づいた有効な方法です。
IBSの原因を究明!低FODMAP食を使った食事法
食事と便には密接な関係があるため、食事内容を見直すことがIBS改善の第1歩です。
まずは、低FODMAP食でメニューを構成し、徐々に高FODMAP食を追加していくことで、不調の原因を探っていきます。
1.低FODMAP食でスタートラインを作る(2~4週間)
まずは低FODMAP食だけでメニューを作り、1日3食を2~4週間食べ続けます。
腸への負担が軽くなり、お腹が緩い、腹痛、不快感といったがお腹の弱い状態が改善してきますので、調子が整った時がスタート時期です。
もしこの時点で調子が整わない場合、過敏性腸症候群ではない別の原因でお腹が弱い状態になっている可能性があります。
2.高FODMAP食の穀物類を加えてみる(1週間)
お腹の調子が整ったところで、次の週から高FODMAP食を少しずつ取り入れていきます。
最初は、穀物類(麦)の高FODMAP食を食事に加えてみましょう。
自分に合わない食材があると、腹痛や下痢、便秘、お腹の不快感といったIBSの症状が現れます。
ただし穀物は、IBS以外にも麦アレルギー、グルテン不耐症、セリアック病といった他の病気にも関係するため、不調になったからといってIBSの原因と断定することはできません。
そのため、穀物を取り入れた後にお腹が弱くなった場合は医療機関を受診し、他の病気の可能性がないかどうか調べる必要があります。
3.乳製品を追加して様子を観察(1週間)
麦がクリアできたら、次は乳製品の高FODMAP食を加えてみましょう。
乳製品に含まれる「ラクトース」は、過敏性腸症候群の原因となっていることが多いため、お腹の調子が悪くならないかよく観察します。
ただし、ラクトース不耐症と既に診断されている方は、IBSとは関係なく症状が現れるため、この項目は省いてください。
4.残りの高FODMAP食を取り入れる(1週間ずつ)
麦、乳製品をクリアしたら、残りのカテゴリーを取り入れて様子を見てみましょう。
野菜や果物など、ないと食事に不便な物から始めるのがおすすめです。
1週間に4種類ずつ、高FODMAP食を取り入れるペースがベストだと言われています。
満遍なく各カテゴリーから取り入れるのではなく、1つのカテゴリーに絞って4種類ずつ食べていく方が、IBSの原因が特定しやすくなります。
また、同じカテゴリー内でも、調子の悪くなるものと変わらないものとがあります。
重要なのはカテゴリーではなく成分ですので、何かの食材に反応したからといってそのカテゴリー全てが食べられないという事ではありません。
低FODMAP食を始める時の注意点!
特定の栄養不足には注意する
自分に合わない食材を含む食べ物のグループを避けるようになると、特定の栄養が摂取できなくなってしまう可能性もあります。
そのため、低FODMAP食を行うなら、カルシウムや食物繊維の不足に注意することが大切です。
一方で、たとえ自分の身体に合っている高FODMAPでも、食べすぎは厳禁です。
自分に合わない食材はなるべく控える必要がありますが、合っている食べ物でも適度な量を摂取するように心掛けましょう。
もし、自身でFODMAP食を管理するのが難しそう、体調を崩してしまいそうと感じた場合には、消化機器専門医に相談をするのも1つの手です。
また、専門医にはお願いをすれば、低FODMAP食の管理栄養士を紹介してもらうことも可能なので、不安な方は医療機関を頼るのも良いでしょう。
食材だけでなく、食べる量も意識する
高FODMAP食を試している最中で、お腹に不調が出たら、別の食品を試す前に再び低FODMAP食で症状を軽減してから試すようにしましょう。
お腹の調子が悪いまま次の食材を試しても、その食材に原因があるのか、前の食材の影響が残っているのかを判別するのが難しくなります。
また、食材を摂取する量によっても症状は変化し、例えば「納豆半パックなら症状が出ないけれど、1パック全て食べるとお腹の調子が悪くなる」、といった場合もあるのです。
その場合は、自分にとって適切な納豆の摂取量は、半パック分ということになります。
細かい作業にはなりますが、自分の身体に合わない食材を見つけるうえで量の調整は重要です。
自分には合わないと思える食材でも、量によっては問題がない場合もあるので、食材そのものだけでなく、食べる量も気にかけることで、自分の食べられる食品の幅が広げられる可能性があります。
長く続けるには家族の協力が必要
食事療法FODMAPを取り入れることで、多くの人のIBSが改善されているという結果が出ていますが、短期間で終わる療法ではないため、周囲の人の協力が必要になります。
食事療法FODMAPを始めるなら、今までの食生活を一新する必要があるため、家族の協力は必要不可欠です。
少なくとも2週間は、1日3食低FODMAP食にすることになる他、高FODMAP食を試す「チャレンジ期間」に突入したら、高FODMAP食を用意しなければなりません。
自分の食事だけでなく、家族の食事内容も多少なりとも変化するため、予め了解をとっておくのが懸命です。
また、チャレンジ期間に入る前は、1日3食低FODMAP食であることが望ましいため、会社などで昼食を食べる際も、お弁当を持参することをおすすめします。
環境が整っていないと、なかなか療法を続けるのは難しいですが、改善が見込めることは間違いないので、根気強く続けていきましょう。
【食材別】低FODMAP、高FODMAP分類表
食事のメインを低FODMAP食にすると、色々と制限するものがあって食事を楽しめないイメージを持つ人もいますが、意外にも低FODMAPの食品の幅は広いです。
乳製品はもちろん、お肉やフルーツも食べられるので、無理なく低FODMAP食を続けることができます。
また、何気なく普段口にしている物でも、高FODMAPの食品はたくさんあります。
意外にもお腹に良いというイメージを持つヨーグルトや納豆も高FODMAP食に含まれているなど、今までの常識とは少し違うということを理解しておきましょう。
カテゴリー | 低FODMAP食の食材 | 高FODMAP食の食材 |
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乳製品 |
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穀物類 |
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肉・魚類 |
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野菜類 |
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フルーツ類 |
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ナッツ類 |
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ドリンク類 |
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調味料 |
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過敏性腸症候群には生活習慣を見直すのも大切!
お腹の調子を改善するために低FODMAP食を利用するのも良い方法ですが、併せて日頃の生活習慣を見直してみるのもオススメです。
便秘や下痢は、ストレスはもちろん、運動不足や不規則な生活によっても起こります。
腸内環境を整える為にも、15~30分程度のウォーキングを習慣にしてみたり、毎日寝る前にストレッチをするのも有効な手段です。
軽い運動に加えて、食事も3食決まった時間にとり、暴飲暴食は避けるようにしましょう。
ストレスを溜めるのもIBSの大きな要因なので、自分に合ったストレス解消法を見つけたり、休日には気分転換してみることも大切です。